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- 情勢の移り変わりについて
情勢の移り変わりについて
教授と元帥
ラプラス計画の再始動アルテミシアがラプラス計画の再始動を企てる。
プロフェッサーに協力を求めるも拒否され、アルテミシアは国家権力を用い大きな権力のない科学社(そのトップであるプロフェッサー)に国外追放を明示退職処分とした。科学社は2日の猶予を与えられる。
アルテミシア >
「プロフェッサー、いるか…?」
貴方がいつも通り研究に勤しんでいると、不意に扉の向こうからノックを叩く音と聞き慣れた女性の声が聞こえてきたであろうか。
「入るぞ。」
その声の主は貴方の了承もなしに扉をあけ、研究室内に侵入してきたであろうか。余程今日は大事な用事があってきたのだろうか。それともいつもこんな感じだっけ。
「先日現れたカミカクシの調査が終わった。やはりあれは廃村に巣食う怨霊が集合して生み出された魔物だった。『噛み隠し』否、『噬み匿し』とはよく言ったものだ。」
研究室内に侵入してきた彼女は一方的に先日起きたカミカクシ事件の真相について語り始め貴方に聞かせていただろう。
「今回サンプルを入手できなかったのは非常に残念だったが…、まあ、リーマークス卿も記憶を操る力を有している。それをベースに今後も研究を行えるだろう。」
カミカクシが有する人の認識を自分のものにしてしまう力は非常に惜しかったが、つい最近隷属させたあの廃村の領主の力もまた人の記憶に関わる力を有していた為、これを研究すれば現在帝国が所持している〝あの兵器〟の改良にも繋がるのではないかと彼女はそう企んでいた。
Prof.ファルフジウム >
「_______、元帥。」
(君が入って来たのをいつもどおりの侮蔑と諦観を滲ませた表情で見つめ、君がしゃべり終えるのを待つ。もしも君がそれ以上話そうとするのなら、彼は君の言葉を制するようにそう呼ぶだろう。彼はこの研究社の代表取締役であり、同時にこの研究所でヒューマンコアを生み出す程の実力者である。故に彼の研究は重要機密であり、作業風景なんてなおさらだ。君はこの帝国の権力者であり、彼の部下たちが君の顔を見てアポイントメントを取ったかなんて聞けるはずも無く、簡単に通過できるのはまあ、良いとしよう。つまり、何が云いたいか、異様なのだ。本来秘匿すべき研究内容に溢れているこの部屋に君が何の連絡も無しに来るというのは在り得ないのだ。曲がりなりにも君は元帥であり、礼儀作法に疎い筈も無く、彼の研究内容を知っているのなら尚更こんな特攻の仕方はしてこない筈なのだ。)
「……、緊急事態か?重要事項か?」
(彼は、きっと知っている。この先で君が何を言い出すか。車椅子に腰を下ろしたまま、くるりと旋回させ、身体ごと君の方を向け、そう訊ねる。何周したかはもう曖昧にしか覚えていないが、此処が大き過ぎる分岐点であったことは何周目でも同じだったように思える。此処で彼が、君になんと答えるか、それがこの物語を、世界の行く末を、大きく変える。)
アルテミシア >
「………ふ」
アルテミシアは不敵に笑う。相変わらず、貴方の察しの良さはいちいち話をする手間が省けて大助かりである。これも長年の腐れ縁故の賜物なのだろうか。
「───────〝ラプラス計画〟を再開させる。」
先程浮かべた不敵な笑みはもう何処かに消えて、酷く落ち着いた声色で淡々と、そして無情にも彼女はそう宣言して自らの運命を選ぶであろう。
「…………お前は、〝どうする〟?」
どうする、とそう尋ね、彼女は貴方をじっと見つめて答えを待っただろうか。その言葉が何を意味するのかは最早考える必要も説明もいらないだろうか。
Prof.ファルフジウム >
「___、回りくどい聞き方をするな。私にさせたい仕事だけを云え…… 」
(彼は沈黙するだろう。ラプラス計画、それは本来非現実的過ぎるという研究結果によって廃案に埋もれていた大昔の統治計画。歴代の元帥や帝王には不可能だった、しかし、今の元帥ならばどうだろうか?膨大な入力が必要な兵器を使えなかったのは少なからず”今まで”の話だ。今の帝国陸軍には魔物さえ手中に収める元帥が居る、ヒューマンコアという出力装置もある、ラプラスの器についても、マスターキーについてもそうだ、昔とは違う。今は十分すぎる程に可能性が見出せてしまう。)
「 だ が 、 〖 器 〗 は 渡 さ な い 。 」
(ラプラス計画、その名の通り、ラプラスの器が大きく関係するのは誰が聞いても想像できるだろう。だが彼にとって、それは最後の砦なのだ。器を君に差し出してしまえば、もう此処で後戻りはできなくなる。何周しても運命力には逆らえず、何度だって同じ結末を追ったが、逆説的に、それ以外は大きく変わる事が在る。自分の動きがバタフライエフェクトの様に他人に影響を与え、その他人が巡り巡って君の今の思考や価値観にほんの些細な誤差を生み出し、同じ言葉を吐いたとしても周回中に同じ返答が返って来た事は無い。故に___この瞬間の模範解答の無い大博打は避けようがない。)
アルテミシア >
「─────そうか。」
〝器は渡さない〟それが貴方の選択。貴方が選んだ___運命。答えを聞いた彼女はまるで悲しみに暮れたような表情で目を伏せると重たいため息をひとつ吐くだろう。そして彼女は小さくそう呟いて、やはりあくまでも貴方は自分と〝対立する〟道を進むのだと、彼女は自分の運命を再度理解したであろう。
「…少し、場所を移動しようプロフェッサー。お前も研究詰めのせいで少しは羽根を伸ばしたい筈だ。コーヒーの1缶くらい、わたしが奢ってやるから、ついてこい。」
貴方の答えがわかった彼女はあなたと二人きりで話し合いをすべく、そのような口上を告げて研究室の外に連れ出そうとしたであろうか。そして、彼女は貴方の返事を聞かぬまま、そのまま研究室を出ていくであろう。
Prof.ファルフジウム >
「____、嗚呼。」
(彼は机からツワブキ除細動器を拾い上げ、そっと指に着けるだろう。あとは君の想像通り、特に大きく抵抗する事は無く、研究者の中庭に辿り着くだろう。ヒューマンコアや社員たちが良く休憩したり、日々のストレスを癒す為に多くの観葉植物が育てられている小規模な植物園の様な内装、中庭にしては広すぎるくらいだろう。彼は君から缶コーヒーを投げ渡されてはじっとそれを見つめる。知能と知識はかなり高く、怪しい部分を見つければそれだけで気付くはずだったが、彼は感覚が低い。もっとも重要な怪しい部分を見つけられはしなかった。君の手料理よりはましだろうと思い、彼は缶コーヒーを開け、口に含む。)
「………、帝国陸軍元帥としての権限は行使しないんだな。それとも無駄だと知っての事か?」
アルテミシア >
「……、もう何百年となる。この国は知っての通り、長年に渡り他国との戦争や魔物の強襲により戦いの日々に明け暮れくれている。戦いは決して終わることがなく、戦いで死んでいったものたちの無念は誰かの恨みに変わり果て、それが永遠に続いていく。」
貴方がそう呟いて尋ねても、答えは返って来なかっただろう。すなわちそれが答え。まさに愚問ということだ。今や帝国の頭脳の中核である貴方の知識と知能はこの国の発展と平和に欠かせないものだ。ここで処罰を下してしまえばその貴重な知能を帝国は失うことになり、帝国はこれ以上の発展を迎えることが出来ず、やがて他国に遅れをとることになり、為す術なくこの国は崩壊してしまうだろう。更には彼女が口にした〝ラプラス計画〟は元々、貴方の協力があったからこそ実を結びかけた要因が大きかった。故に、貴方の力なくしてはこの計画の進行は非常に厳しいものとなるだろう。そもそもこの〝ラプラス計画〟 のはじまりは長きに渡る戦争を終わらせる為に考案された計画である。そのことを改めて理解してもらう為に彼女は少し帝国の歴史を語るだろう。
「そうして長きに渡って国が戦いを続けた結果が今のこの国の現状だ。治安は最悪。傭兵団でも雇わなければ迂闊に外も出歩けない。街は武器や防具を作り出す工場に溢れ、森や公園といった場所は尽くその工場の新設に地に変わっていった。街の職人たちも次々と店を潰されて職を追われ、今や帝国陸軍が支給する賃金に頼らなければまともに生活も営むこともままならない。そんな状況が続けば当然貧富の格差は広がり、あちこらにスラム街ができた。」
「────────なァ、プロフェッサー。」
ここ迄帝国の歴史を語ってきた彼女は改めて貴方の顔を見て問いかける。
「──────この国(ワタシタチ)は、〝いつまで〟戦い(コロシ)続けなければならないのだろうな?」
Prof.ファルフジウム >
「_______、戦いの形が変わろうとも、私達が戦いを辞める事は無い。皆、生きるのに必死だからな。」
(ただ呼吸をして心臓が脈動しているという意味では無く、真の意味で意志を持って生きるのなら、自分達は争いを辞めないだろう。動物ですら生きる為に捕食し、獲物を殺す。腹が空けば共食いだってする。そんな動物に意志やプライドが重なればどうなるだろうか?それはきっと、君や彼が良く知っているだろう。この国を腐らせているのが誰か、君も、そして彼も、本当は心の何処かで気付いているのではないだろうか?少なからず、彼自身は自分が悪である事を自覚し理解している。物事が前進するにはある程度の悪が必要なのだ。誰よりも前に進もうとしている人間が悪に成るのはもはや必然なのだろう。)
「戦いをこれ以上生み出したくないのなら口も耳も眼も塞いで、その場に蹲って動かない事だ。___それが嫌だから、お前は”戦う”のだろう?」
(意志を捨て、感受性を捨て、何も見ず、何も聞かず、何も言わず、何もしない、それが最も過ちを生み出さない事だ。転びたくないのなら歩かなければいいのだから。でも、優しい君はそれが耐え切れないのだろう。多くの民が苦しんでいる現状を知って尚、その場に縮こまって立ち止まってしまう事なんて出来ないのだろう。)
アルテミシア >
「──────そこまで分かっていながら、お前は尚、わたしを止めるというのか。」
貴方が自分自身を悪である事を自覚し理解しているように、彼女も自分を悪であるとそう自覚している。彼女は多くの人を愛するからこそ、より多くの人を憎み続けなければならなかったのだ。そして、自分の辿る道が理解出来た途端に彼女はその運命を納得して、それが自分の罪に対する〝罰〟なのだと受け入れた。故に彼女は自分の運命から逃げることはしない。最後まで自分の責務を全うし、戦い抜くつもりである。…だが、貴方は彼女の決意を知って、尚邪魔するつもりでいるようだ。彼女の思想がとても高潔で素晴らしいものであるとはお世辞にもそうは言えぬだろう。しかし、幼き日からの縁に免じてその考えを退けることはどうにか叶わないのだろうか。彼女は胸の内でそう呟き、本心では貴方との対立を望んでいなかったであろう。____それでも…、それでも、貴方が彼女の前に立ち塞がるというのであれば
「─────分かった。なら、わたしはお前を〝退職処分〟及び〝国外追放〟に処する。2日の猶予をやる。それまでに荷物を纏め、この国から去れ。」
アルテミシアは貴方に二つの処罰を言い渡し、後ろに振り返っただろう。もう二度と顔も見たくない、という彼女のメッセージなのだろう。
Prof.ファルフジウム >
「……、力尽くで退かしてみろ、元帥。私は必ずお前を止めるぞ。」
(彼は去り行く君の背中にそう吐き捨てるだろう。恐らく2日後から科学社と帝国陸軍は内戦状態となるだろう。否、方や政治権力を持つ軍隊で、方や一企業だ。世間的な見え方はテロリストやレジスタンスと正義の味方といった所だろう。だが今更だ。彼は疾くの昔に万人に嫌われる悪者だから、今更君にどんな抵抗を見せようと、世間からの視線はこれ以上鋭くも白くもならないだろう。彼がこうして今ここに立って居るのは他でもない、次こそ、次こそは止めて見せるという硬い意志がまだ砕けてはいないという証明でもある。今まで何度も対立した、何度も何度も、何周も何周も。その度に多くを失った。ある時は侍の国の蛮人と共闘した事もあった。ある時は不死城や傭兵団が明確にこちらを敵視する事もあった。修道長が戦禍で命を落とした事もあった。海賊に救われたこともあった。何通りもの分岐点を経て今、もう一度、刃と銃口を突きつけ合うことになる。引き返せる地点はもう振り返っても見えない程に遠くにあって、背後に目を向ける事が徒労でしかない。きっと、君もそうなのだろう。) 〆
教授と船長
3日間の猶予の中、プロフェッサーはキャプテンと会話を交わす。
それは、プロフェッサーの持つラプラス計画に必須な3つのパーツのうちの1つ"ラプラスの器"をいつの日か別の誰かに託すためである。
あくまでも海賊と科学社に友好関係はないと見えるよう振る舞うが、裏では手を取り合う可能性を残した。
キャプテン・キッチュ >
(今宵はいい月が出ていた。理系大好きヲタクに合わせて言うなれば明るさは1ルクス。浪漫思想ならば、……アトリエで豆電球を1つ灯し、キャンパスに向かって夢を描いている頃合だろう。不平等な世界に平等に注ぐのは、星、月、太陽。それから、【死】我らは抗えぬ万物の終焉に、今日ももがきながら暮らしてる。──────暗闇、誰も使っていない無機質なコンクリートがむき出しの建物だった。奥の方での薄明かり、貴方が居るのはその隅に。…カツン。〝 わざとらしく革靴の音が鳴る〟。
「洒落た〝城(廃墟) 〟じゃないの。」
「前のところよりず~~~っといい。…………………知ってるか?昔船は夜に進めることが多かったそうだ。………羅針盤がない時代は、星座が指標になったから。」
「………………ここは良いよ。……アンタの陰気なとこじゃ窓がねェし、帝国は明るすぎるから星がよく見えないけれど。」
「……………ここなら、よく見える。」
「そうだろう?」
統治者の内、誰よりも若い男の声が響いた。これで何度目だったろうか。廃頽したバラードをBGMに、下手くそに踊りながら物語を一緒に紡ぐのは。)
Prof.ファルフジウム >
「そうか、_______それで、ボウフラ共の”不幸自慢”はそれで終わりか?」
(暗闇は多くの情報を奪う。水平が見えないから、垂直が分からない。垂直が分からないと真上と真下が解らなくて、真横を向いたつもりでも基準がないゆえにそれは真正面に成ってしまう。唯一のヒントは足の裏に感じる地面だけ。暗闇の中、足の裏の感覚だけを頼りにたった10歩進むだけでも、何処に到着したのか、歩みを終える頃には何処を出発したのかすら分からない。これも、目印になる情報が不足しているからに他ならない。古くから星空が方角を指示していた様に、物事には目印が、指標が必要だ。しかし、それはあくまで、指標を見失ってしまった時の話に過ぎない。彼は夜空だけが照らすこの観客のいない舞台の上で、君と言う照明に照らされ、初めてこの物語にもう一度その存在を主張できる。目立ちすぎる車椅子は今は無く、すらりと痩せ細った身体をそちらへと振り向かせ、そして、なんの躊躇も無く銃口を向ける。)
「私は指標を見失わない。お前達と一緒にするな__________ボウフラ。」
(彼は其処まで口にしては迷いなく引き金を引くだろう。十分に苦しめて殺す為にあえて急所を外して放った弾丸は、君の脇腹を狙いすまし綺麗な軌道を描きながら風を切り進むだろう。)
キャプテン・キッチュ >
「はっはァッ!!なんだってまァ、アンタって奴ァ〝 愛(相)も〟変わらずだなァッ………!!」
(彼は半身を翻し避けた。白い歯を見せ、ニンマリと笑いながら後ろに弾丸がめり込むと同時に。胸ポケットから素早くフリントロック式の銃によく似たそれを取り出す。いつでも撃てるようになっていたのか、カチャリと軽く音を鳴らしたのならば銃口を向けて口にした。)
「………………〝 星座は季節限定〟だ。宝を隠すにゃ丁度いい。……アンタらのような〝氷を削ったような奴ら 〟が見つけられないように宝を隠すヤツらは夢を抱いて眠るのさ。」
「………〝 希望的観測をティースプーン2杯〟。………こいつァ鉄則だと…………俺ァ前にも言ったはずだぜ。」
くつくつと低く喉のを鳴らし、まるでショーの一環だと言わんばかりに彼は愉しそうに言葉を紡ぐ。
「………………──────またこうして踊れて嬉しいよ。」
彼は軽く顔を上げた。ゴテゴテとしたお洒落な〝装飾 〟がない、スラリと背の伸びた貴方を見上げる彼の瞳が、その帽子の隙間から半分ほど見えている。 蜂蜜色の浪漫と深い野望を宿した瞳が交わった。
「………………アンタはどうしてここにいる?…………素敵な場所だが似合うとは言っちゃいない。…いつもの消毒液臭いあの場所はどうしたよ。」
Prof.ファルフジウム >
「元帥は世界から争いを消す為に私の宝を奪おうとしている。さもなくば退職処分と国外追放、だそうだ……お前には難しいだろうがな、科学者は可能性を否定し続けて唯一否定できない可能性を真実と呼ぶ。だから私達の足元には無数に”芥”が転がる。」
(向き合った銃口は互いに標的をしっかりと捉えている。どちらかが引き金を引けば、弾丸が標的の身体をぶち貫くのは言うまでもない。だがそれはあくまで、素人同士の場合に限るだろう。人を欺き”心すら盗む”君と、人を謀り”心すら奪う”彼、共通点は魔法で出来た世界から見放された出来損ないである事と、反吐が出る程互いを知って居る事。)
「私はこの地位も宝も差し出すつもりは無いが、あの馬鹿と正面から殺り合えば確実に私が死ぬ事になるだろう。参謀でもなければ英雄でもない、戦闘に限った素質だけで言えばお前達の足元にも及ばない、 " 科 学 者 " だ。だから、……だから私は此処に居る。まだ捨てるには勿体無い程の可能性を"芥"と呼ばない為に。喩え元帥に負けようともそれはこの"可能性"を否定する理由には成り得ない。」
(元帥の欲している宝が何なのか、君には勿論解るだろう。しかし、彼が云う宝を、そして元帥が真の意味で奪おうとしている宝が何かを、君はきっと理解できない。知る由も無いのだから無理も無い。だが、彼の侮蔑と諦観の中に垣間見える一筋の曇り無い可能性の存在、それが物的執着ではない事は"盗み"を生業とする君になら分かるだろう。)
キャプテン・キッチュ >
「嗚呼、知ってるよ。…………………アンタらの宝。……………………………魅力的だよな。」「………………………ンでも。」
「宝を使わなくちゃ変えられない世界なんて、何度変えたって〝 変わらない〟とさえ思ってる。」
「色んな世界を見てきた。…………宝を手にして幸せになるやつなんざ、………………………絵本の中だけだ。それがほとんどなんだよ。いつしか金より大事なもんを守る為に宝を得た奴だって、欲に目がくらんで腐り落ちた。」
「……………良いかい、此処に本当の平和なんて存在しないんだ、〝皆が望む世界 〟は有り得やしない。それを宝で捻じ曲げ民を釣ったところでなんになる。……………〝嘘っぱちのハリボテ 〟と何も変わりやしないだろ。」
「…………………アンタらには足りないんだ。〝 魅せる能力〟が。どれほど世界が広く美しいものなのかを知らねえんだ。………………こんな世界がゴミだと言うなら、〝 次の世界はどれほど魅力的なもんなのか〟を民に語ったことはあるのかい?」
(彼は、貴方の話を一通り聞いた後に口を開いた。分かるさ。貴方の野望、貴方の信念。 同じ男としてこれ以上ないほどに共感するさ。だから、〝 不思議で仕方がない〟のだ。何故〝前しか向かない 〟のか。貴方達が見てきた世界は、一体なんだったのか。
「何度だって言ってやる。…………希望的観測が足りないんだとな。」
それだけの信念があれば世界を動かすことが出来るだろう。キッチュはどこの国にも属していない。だから周りはこう言える。【知ったような口を聞くんじゃない】と。彼は戦闘能力は高くない。盗賊から〝 無法者〟になってはいけないからだ。魔法も対して使えやしないし、化学なんて尚のこと。統治者の中では1番無能と言ってもいい。
「………………でも、…………アンタのその考えは、……いいと思う。だからさ、俺ァ。……………………アンタが好きなんだ。全く関係ない俺が、笑って誤魔化してここから逃げないぐらいにな。」
彼は、誰よりも〝 運がいい男〟というだけだった。)
Prof.ファルフジウム >
「……お前には ” そ れ し か 方 法 が 無 い ” 、と言うだけだろう。」
(云うまでも無いかも知れない、君も自覚しているのかもしれない。だが云わずにはいられなかった。君は自分とよく似て居る。忌々しい程に、虫唾が走る程に。浪漫や夢や希望なんて名前の虚像にしか縋れないから、君はそんな言葉を吐くのだろう。同じだ、同じだよ。皮肉だが、もう彼は”夢を見れない”から、形有る物的な可能性とやらに、視認できる確率という数字に縋る事しか出来ない。まるで形を失った極彩色の絵画か、はたまた色を失った朝焼けの空の様で、互いに多くが擦り抜けていった両手に残ったただひとつのそれを後生大事に抱き締める事しか出来ないから。だから君達は平行線でしかない。星空だけが照らすこの舞台には観客も居なければ、裏方も居ない、役者と呼べるのは云い得て妙だが君くらいだろう。そろそろ舞台が一転するのか、空には雨雲が染み始め、星月を隠し始めるだろう。もうすぐ雨が降るかもしれない、それともただ暗く重い風が過ぎ去るだけか。)
「 ” 同族 ” の好誼で教えてやる、木偶の坊。〝皆が望む世界 〟なんて無いと言ったな?それには私も大賛成だ。必ず皆に該当しない例外が生まれるのはどれだけ科学が発展しても、どれだけ浪漫が蔓延っても変わらないだろう。だがな、"皆"という枠組みを少しでも広げられる可能性が在るのなら、例外を限りなく0に近付ける事は可能だ。それに生涯を賭す事が私を私足ら占める所以なんだよ。」
(人が人足ら占める所以とは、個々の義務を果たせるか否かだ。故に彼がファルフジウムという人格を手放す時、それは紛れも無く、あらゆる可能性を目の前にしながらその歩みを止めた時だろう。その無い筈の心が願うのは、”彼女も皆の内の一人にしたい”それだけでしかない。彼女が〖除け者〗に成らず、なおかつ何も失わない方法は、彼女の眼を覚ますしか方法は無い。民衆に語り掛ける事は出来ないが、もしもそうしたとしよう。それが大衆正義に成り得たとしよう。そうなってしまえば、彼女は間違いなく除け者になってしまうだろう。語り掛けるとするならば、彼女が目を覚ましたその後でなければ意味がない。だから彼は、未だに君の心臓に銃口を向けたままなのだろう。)
キャプテン・キッチュ >
(貴方がどれほど努力をしてここまで上り詰めて来たのか。機械でもない身体を機械のように弄り回して、いつしか手のひらの温もりは虚空。キャンパスに思い描いていた理想絵図は混ぜ過ぎてヘドロのような色になってしまった。何度も何度も塗り替えて、誰にも染まらぬ黒になってしまった。我等が海賊、ギムレットに選ばれし人間は寿命が【短い】。不変なのはこの船と思想。それは貴方がボロボロの服を身にまとい、死に物狂いで生きるための、誰かさんの小さな世界を帰るために縋った分厚い本と、消えない意志と何が違うって言うのか。〝 彼等はよく似ていた〟。黒いコートが風になびく。互いの銃口は、ぶれない。
「俺の武器はそれだけで十分だ。」
「…………………─────俺が持っている船は、アンタら帝国が言うには〝玩具 〟も同然らしいな。」
「……………だがな、俺だって少しでも〝 夢を見せることができることに賭けて船に乗せる〟んだ。………空を見上げたら船がある。…どこにだって行ける船だ。」
「……〝こんなクソッタレた世界 〟と口にするなら、捨てちまえばいいんだと言えるように。」
「………………小さな世界を救い出せたらいいと、アンタだって思ってる。」
(遠い昔も、貴方と同じく国を、世界を変えようとした民がいた。今は砂漠になっちまったが、それでも確かに〝 人工的に神様を作ろうとした〟。頑丈な船は鎧になる。合体すりゃ為す術もないだろう。贄と犠牲の上に成り立つ平和(神様)なんざクソ喰らえ。七つの宝のひとつを盗み出した正気を保った少年1人。船に乗り平和の為に意志と生命力でノアを動かしたのが──────【⠀アイオレット=リリー⠀】の始まりだ。
「………………アンタ、俺の事好きだろ。……………隠さなくったっていいんだぜ?嫌いならとっくに引き金は引いている。それよか、………俺達の旅を全力で邪魔するはずなんだ。」
「…………………でもアンタはそうしなかった。」
「………………なァ、俺もアンタのことが好きだよ。」
「………だから、…俺がここでアンタに殺されたって直ぐにギムレットが遠い海からやってくるさ。……………俺がアンタを曲げられないように、アンタなんかに俺は潰せない。」
「…………………素敵だろ?」
演劇は、…客1人観客1人。それで十分なんだよ。裏方も要らない、必要なのは〝誰かが確かに見てくれている 〟それだけだ。逃げる勇気と立ち向かう勇気、捨てる勇気に貫く勇気。何をするにも勇気が必要で、どれだけあっても足りやしない。今必要なのは。
「…………………………………こんな夜、アンタと2人で話すのもまた浪漫だ。」
銃をどちらかが下ろす勇気だ。…彼は、銃をゆっくりと降ろし、軽く肩を竦めて笑う。)
Prof.ファルフジウム >
「______私はな、お前が嫌いだよボウフラ。眠り姫すら口説き落として〖連れ去る〗その口も、あらゆるしがらみを物ともしない〖魔法の舟〗も、私には無いものばかりだ。だから私は〖お前を好きには成れない〗
…… コ ン デ ン ス 。 」
(彼はそう応えると君へ向けて弾丸を放つ、一切の容赦も無く、その心臓に目掛けて。君はそれを視認するだろう。そして発砲音によって意識は銃口とそこから吐き出された"拒絶"を形容したかのような弾丸に向くはずだ。だが、君の心臓は血を吐かない。君が弾丸を意識する事を見越して彼は黒い皮手袋でそっと空気を撫で、それに共鳴するように君の身体を足元から大氷壁が持ち上げ、上空へと打ち上げるだろう。帝国に足を踏み入れれば場合によっては殺されかねない君、そして君はその夢を乗せて現世に浮かぶ舟の持ち主だ。君が居なければその船は動かない、多くの船員の生命線とも言える君。そんな君を置いてギムレット船は遠くに漂うだろうか?)
(否、そんな事は在り得ない。外界からのあらゆる干渉を阻害するギムレット船がわざわざ生命線だけを残して遠くに然るメリットも去らなければならないデメリットも無い。彼はそれを見越して大氷壁の償還によって君をギムレット船の甲板上空に向けて吹き飛ばす。そう、君を嫌う事には意味がある。もちろん私怨もあるだろう、それも嫉みと瓜二つの醜い感情である事は否めない。だが、人間性を欠いた彼にはそんなちっぽけな感情論なんてどうでも良いと思える程に、君を嫌う理由が、君を好きに”成れない”理由があった。アルテミシアは多くの魔物を使役し、その中には小柄で偵察に向き過ぎる程に適任な魔物も存在した。我が社のセキュリティを突破し、眠り続けるラプラスの器と呼ばれる機械仕掛けの少女を連れ出す事なんて容易だろう。きっともう器の在り処も知っている。自分を追い出す工程と並行して器を奪取する事は容易だ。当然、こちらには為す術がない。)
(___________その時に、【元帥からマークされていない本職の盗人】と、そいつに器を持たせる為の【万人にとって突破不可能な宝箱】が必要なのだ。今ここで引き金を引かなければ、自分と同等に君はマークされていたであろう。彼は、君が必要だからこそ、君を拒絶する必要が在るのだ。言っただろう、科学者とは可能性と向き合う者達の事を云う。)
キャプテン・キッチュ >
「…………──────そう言ってくれなくちゃ困るよ。」
(…愛情を返されるのは何よりも〝苦手 〟だ。だって自分は海賊だから傍に居てやれないんだもの。いつだって置いて言ってしまうんだもの。誰にでも言う口説き文句は一種の彼のご挨拶、誰も真に受けない常套句。〝王様 〟にも全く同じことを話したことが、あったっけ。姫を口説き落とすだけ口説き落とし、あとの王子役は他人任せのボウフラ目掛けて、弾丸の音が強かに鳴る。それは1度のクラップ音によく似ていた。──────が。
「………………ッッ、……………」
〝 心臓から血は吹き出さなかった〟。否、彼なら〝小細工 〟は仕掛けていた、だから結果論としては変わりやしないのだがこれは。〝 想定外〟。しゅるりと黒い手袋を外すと同時に遥か上空に上がるギムレットと自分。冷感を感じつつ見下げれば、そこにいたのは真っ直ぐ見つめる貴方の姿だった。外れかけた帽子を手で抑えながら、彼はあなたに叫ぶだろう。
「…………ッッ、…いつかアンタ〝 も 〟船で攫いに行くッッッ………………!!!!!!!!!!!!!!!!!だからッッッ………!!!!!!!!!!」
「首 洗 って 待 っ て ろ ッ ッッ…………! ! ! ! ! ! ! ! !」
馬鹿だから言わずには居られない。貴方より若いこの青二才は、〝宝の 取りこぼしは許さない〟。自己犠牲は最も嫌いな言葉だった。可能性のために全てを捨てようと目論むならそれを阻止しなきゃ行けない。だってそれが、
「 キャプテン・キッチュだからなァ………………、」
…彼はギムレットを出さざるを得ない。宙をかけるそれはまずは仲間を迎えに行かなければならない。夜だった、雨が降りそうだと貴方は言っていたけれど。………月の光は凍りついた空気と貴方を煌びやかに写していた。)
元帥とガウオット
アルテミシアは旅人を装い、不死城の住人であるガウ・オットの手を借りて不死城国内へと潜入した。そこでアルテミシアは使役している蝙蝠の魔物2匹を不死城へと放ち、謎の多い不死城の内政や城や領土の構造などの偵察を行った。
アルテミシア >
不死城エイブラハム国領土郊外。長きに渡り帝国の進軍を一切許さない魔物の巣窟不死城『エイブラハム』。魔物が多く住んでおり、ビースト、ナイトウォーカー、スプライトの人口が多く魔法に特化した国である。大陸の北にある霧の深い森の中に突如現れる古城そのものが不死城の領土であり都市。許可もなく入ろうとしても、幻のように霞んでしまうようになっているので、公式な手続き又は"特殊な効果"を持つもの以外入ることができない。今日、アルテミシアはその領土内への侵入を目論み、ローブで自身の素性と顔を隠し、可能な限り自身の体格を男寄りに変装しただろう。
「……。」
今回の彼女は旅人を装っており、演技を忠実に再現すべく持ち物も必要最低限で来ていただろう。それが仇となったのか功とかしたのか、不死城エイブラハム国領土に近付けたはいいものの、食料や水は既に尽きており、体力も限界に近づきつつあったアルテミシアは意識が朦朧としていただろう。任務遂行と帝国の平和の為だけが彼女を動かす原動力となっていて、最早足は無意識にエイブラハムの領土を目指していただろう。
「…………あ。」
すると、前方に人影が見えたであろうか。エイブラハム領土の魔物であろうか。その姿を確認した彼女はそこで意識が途絶えてしまい、貴方のすぐ側で倒れ伏してしまっただろうか。
ガヴ・オット >
「……?」
(それはオレが帝国ぶらり旅からエイブラハムに帰国した直後のことだった。事務所兼自宅である城の一室に少ない手荷物を放り、さぁて飯でも食いに行くかと城に入るまさにその時だ。なんかすぐ傍で人が倒れる音がした気がした。いやまさかそんなタイミングよく人が倒れるなんてそんな)
「倒れてんじゃないか!!!」
(オレは地面をベッドに寝転がったそいつを見て仰け反った。この服装、装備の軽さ、ここの住民……いや旅客か?しかしここはエイブラハム。普通ならば侵入はできない難攻不落の不死城。旅客だとしてもただの旅客ではあるまいとすぐに察しはつく。参ったな。仮にこいつが敵対勢力ならばこのまま放置が一番だが、不死城の民であればむしろ救わない方が厄介だ。だが肝心のそれを目視のみで判別はできない)
「あーーー、あんた、大丈夫か?」
(と軽く揺すって様子を伺ってみる)
アルテミシア >
「ぅ……」
貴方が身体を揺すると、小さな呻き声のような声が返って来るだろう。どうやら意識は少しだけ残っていたようである
「た、す………け…………。」
薄い意識の中で旅人は懸命に声を振り絞り、貴方に助けを求めただろう。そして、旅人はまるでその言葉が最後のひとことのように力尽きて意識を失ってしまっただろう。……だが、ここまではアルテミシアの計画通りである。意識が朦朧とし、今にも空腹と疲労で気絶しそうであるが、完全に意識を落としてはいない。此処でもし貴方が何か仕掛けて来るようであれば、それに備えた応戦の術も既に整っているであろう。
ガヴ・オット >
「あ、おい、あんた――」
(意識はまだ残っていたらしい、そしてすぐに襲ってこないだけの理性もあるようで安心できた。ただ、その意識が辛うじてということを除いて。オレが訊きたいことを訊く前に勝手に気絶したという訳だ。全く身勝手極まりない。何でよりによってオレの前で野垂れ死のうとしてんだ。頼むからオレ以外の誰かの前で死んでくれよ……)
「あ、あー、そこのスプライト、そうあんただよ。ここに15cがあるんだ。プリンとやらが45個も買えるらしい。欲しいだろ?いや、プリンじゃなくてこの金だよ。これやるからそこの瀕死そうなあいつ、引き取って――あっ、逃げないでくれよ、おい!!」
(……オレは目の前の半死体(?)を見下ろし直して、はぁ、と溜め息ひとつ、取り出した金を閉まって倒れているそいつを背に抱えてすぐそこの自宅へ連れていこうとする)
アルテミシア >
「………。」
声を押し殺し、薄い意識の中で自分が何処かへ連れていかれるのだと自覚すると、彼女は領土侵入のチャンスであると確信し、そのまま貴方に身を任せるだろう。貴方の背におぶられて、貴方の自宅に連れてこられれば、間もなくして目を覚ますであろう。
「…此処は。」
天井を仰ぎみて状況を確認する。どうやら連れてこられた場所は先程の者の家であると判断すれば、少し周りを見渡してその人物の姿を探そうか。
「………アンタがここ迄オレを運んできてくれたのか。助かった。ありがとう。」
声と口調も変えて、自分の正体を決して悟らせぬようにしたアルテミシアはその声で貴方にまず簡潔にお礼を告げただろう。
「……此処は不死城エイブラハム領土内か??」
また少し周りを見渡して、アルテミシアは貴方にそう尋ねる。そして何はともあれまずは自分の空腹と体力を回復させるために貴方に簡潔でも良いので食事と水分を要求しただろう。
ガヴ・オット >
「……」
(オレは安否も正体もわからないこいつを家にあがらせた。いや、その前に"国に立ち入らせた"。まぁそれくらいなら大した問題じゃあないだろう。問題は、こいつが誰なのか、どこから来たのか、だ。どの道ここに長居はさせたくない。オレは家に着くとひとまずそいつをベッドに寝かせる――オレ以外の誰かにオレの寝ぐらを使われるのは心外、霹靂も声高らかにという所だ。オレは厨房で何かを作りながら、そいつが起き上がるのを待つことにした)
「あぁ、お目覚めかい、どっかの誰かさん。やぁ、気にしなさんな。むしろ忘れてくれた方が良い」
(ありがとうと言われると、そんな事を返して)
「質問を返すようで悪いが、あんた、エイブラハムの者じゃないのか?エイブラハムの人間なら"ここ"がエイブラハムかそうじゃないかくらい、分かるはずだろう?」
(出来上がった料理と有り合わせの飲み物を手に、それを渡すのをためらう)
アルテミシア >
「嗚呼、オレは遠い大陸からこの手紙と荷物をエイブラハムのある商人に渡す為に旅をしていたんだ。…だが、此処に来る途中で船が大波で大破しちまってな。……お陰で積荷も食料も水分も何もかも全部海の中。だが命かながらこの大陸にたどり着いて、運良くさ迷ってたら此処に着いたってわけさ。」
アルテミシアはその証拠と言わんばかりに水に濡れて乾いた白い封筒の手紙を貴方に見せてから自分のポケットにしまい込んだだろう。当然ながらこの話も手紙も領土内に侵入するためのブラフであり、手紙は白紙である。そして貴方がその話を聞き入っていたなら、その隙を伺ってあなたが持つ料理をそっと受け取るだろう。
「嗚呼、美味そうだ。ンじゃ、いただきます。」
そう言ってアルテミシアはゆっくりと料理を自分の口にいれていくだろうか。
「だはぁーー!!こりゃうんめぇ!!ほんと生き返るような気分だわ!!」
料理の味を確かめ、特に毒も盛られていないことを確かめたアルテミシアはガツガツと豪快に食べ進めて、あっという間に平らげてしまっただろうか。そして最後にコップ1杯の水を口に流し込んで、満面の笑みを浮かべてそうな声をあげて料理の感想を述べただろう。
「いやぁ、アンタにはホント助けられた。ありがとう!!」
ハッハッハ、と快活な笑い声をあげながら貴方に再度お礼を述べれば、貴方もそれなりに悪い気はしないのではないだろうか。此処がもう不死城エイブラハム領土内であればもう貴方に用はない。さっさと出ていき、本来の目的を果たすまでである。
「ンじゃ、商人に渡す用があるんでな。それにアンタも見ず知らずの者を自分の家に長居させたくはないだろう??オレはさっさと出ていくぜ。」
ガヴ・オット >
「なんだ、そうかいそうかい、それは災難だったなぁ。じゃあオレはさぞかし救世主って訳だ」
(そういう理由なら仕方ないと彼?に餌を与え、オレは椅子に座って悠々、『良いことをした気持ちいい気分』に浸る。料理を平らげてそそくさと出て行こうとする相手に、「やけに回復が早いな」と思いながら)
「その手紙、これから届けるのかい?オレはこう見えても運送業者でさ、まぁなんだ、宣伝って訳じゃあないが、今度そういう無茶をするくらいなら頼ってくれていいんだぜ。その手紙、何なら満身創痍なあんたに代わってオレが届けることもできるが、どうだ?」
(なんて冗談めいたお節介まで言ってみる)
アルテミシア >
「いやいやぁ、命の恩人さんにそこまでさせちまうのは忍びねぇ。それにこの手紙は中身を読んじゃいけねぇ代物らしい。『らしい』ってのはオレも読んでねぇからわかんねぇんだけどよ。上の命令じゃこれを必ず未開封の状態で目的地にたどり着かなきゃならんらしい。」
命の恩人とはいえ、人に任せて最後のこの任務まで失敗に終わってしまったら自分の面目が立たないと、アルテミシアは更にそう告げてあくまで自分が運ぶという旨を伝えただろう。
「それに命かながらこの手紙をここ迄運んできたんだ。大波で船が大破して遭難しても何とか岸にたどり着いたのも、偶然通り掛かったアンタに助けられたのも、全ては天の御召に違いねぇ!!そしてオレぁ確信したね。…ひょっとすりゃ、これはオレの使命って奴に違いないってね。」
へへへっ、とまた屈託ない笑顔を浮かばせる声色でそう告げたアルテミシアは正に使命に燃える商人そのものに見えただろう。
「そんじゃ、もういいかい?メシご馳走さん。あんがとよ!!」
話はコレで済んだだろうかと尋ね返して、貴方の家の出口扉に手をかけたならそのまま外へ出ていこうとして、再度改めてこれまでのことにお礼を気さくに述べたなら、貴方が止めにかからない限り外へ出ていくだろう。
ガヴ・オット >
「へー、ほー、ふーん。あんたがそこまで言うならオレは手出しできなさそうだ」
(正直、依頼をしないのであれば、その手紙の内容やらバックストーリーやらはどうでもよかった。オレには関係ないことだ。しかしまぁここまで熱血漢なふるまいをされたら、オレはもう「きっとそうなんだろう」と信じる他なかった)
「あぁ、無事に帰れるのを祈っている」
(と使命感に満ち溢れた彼を見送れば、ただただ面倒なことにならないといいなぁ、なんて思いながら料理の後片付けに取り掛かるのだった……)〆
アルテミシア >
「さて、と…。」
不死城エイブラハム領土内に無事侵入したアルテミシアはガウ・オットと別れたあとひと目触れない路地裏に身を潜めただろう。そして周りに誰もいないことを確認したならば、声を変える魔法を解除してひとことそうつぶやくだろう。
「いけ…。」
そう言ってアルテミシアは二匹の屍喰蝙蝠を呼び出して空に放っただろうか。彼らは身体が小さく、不死城に風土に溶け込みやすい魔物だ。彼らに偵察を任せれば不死城の内政や城や領土の構造などが色々分かる筈だろう。
「ふふふ…。」
これからの展開の広がりに思わず不敵な笑みを浮かべたアルテミシアは、静かに彼らが持ち帰る情報を楽しみにしていただろう。
小鴨と元帥
元帥と小鴨は喫茶店にて会話を交わす。小鴨は帝国は今のままでも平和な道を進むことが出来ると提案するがアルテミシアは戦いの道を選ぶことを宣言する。アルテミシアの望むラプラス計画には小鴨の所持する"マスターキー"が必須であるが、協力をしない小鴨は陸軍とも喧嘩(戦争)をする意志を告げた。
小鴨 浅葱 >
「、(そわそわ、きょろきょろ。待ち合わせ場所の落ち着いた雰囲気のあるカフェで忙しなく視線を動かして、もう何個目かも分からない砂糖を紅茶にぽちゃり。マスターがそれ以上は…、と一応声をかけるも小鴨はそれどころでなくて、だ、大丈夫です!、と謎に元気よくお返事。ここのマスターは彼女の性格を知っているから、それ以上は何も言わずにそっと代わりの紅茶を用意することにした。きっと小鴨は無意識のうちに沢山入れた最早砂糖同然の紅茶に噎せるだろうから。閑話休憩。─チリン、と鳴った扉のベルに反応して入口を見れば待ち人である貴女の姿。待ち合わせ10分前に来るところが貴女らしい。いつもなら小鴨が後なのだけれど、今日の小鴨はそれどころでなくてなんと1時間前からここにいたり。)
元帥ちゃん!!!教授ちゃんをたいしょ、え、あ、教授ちゃんが家出するってホント!?
(退職、と言いかけて飲み込んだのはまだ時間に猶予があって、あの教授ちゃんが何もせずに退職するなんて考えられなかったから。まぁそんな些細なことはどうだっていいのだ。)
なんで…?盛大な喧嘩した…?
(これでも、一応ながらに自分だって統治者なのだ。それなりの情報網はあるし、そこから教授が退職するというのも聞いた。でも詳しい理由までは大まかにしか分からなくて、元帥ちゃんがどんな気持ちでそれを言ったのか、教授ちゃんがどんな気持ちでそれを受け取ったのか、分からなくて。だから、貴女から話があると連絡が来た時はにも無く飛びついた。そして時は現在となる。」
アルテミシア >
「ん、やあ小鴨ちゃん。今日は珍しくはやかっ──────。」
いつも君と待ち合わせている喫茶店に辿り着き、お店の中へと入れば珍しく君の方が先にお店で待っていた姿を見かけただろう。彼女はまさか自分の方が君を待たせる立場になるとは思ってもおらず、少し意外そうな視線を向けたあとに普段通りにまずは挨拶をしようとしただろうか。しかし、その言葉は途中で君の焦り声の質問によって遮られてしまっただろう。
「……。」
その質問を受けた彼女は雰囲気を変えて少しの間押し黙り、貴方をじっと見ただろう。
「─────そう、そういうこと。」
科学研究所の責任者にして統率者のひとりであるプロフェッサー・ファルフジウムの退職処分と国外追放の件は既に情報が飛び交ってしまっていることに気が付いた彼女はそれを理解し、最早貴方に隠し通すことも無駄だろうと判断するだろう。
「全ては帝国の平和にためだよ、小鴨ちゃん。プロフェッサー・ファルジウムは残念ながら我々の協力者でなくなった。あの教授は私たちと敵対する道を選んだんだよ。」
理由を求められた彼女は『全ては国の為である』と主張し、貴方が親愛する教授はその思想を妨げる反逆者であるという旨を伝えて、貴方に理解を求めただろう。だがしかし、いきなりのことでまずそれはきっと叶わないだろうと考えた彼女は更に言葉を続けるだろう。
「………小鴨ちゃんは、この国がどんな国になればいいと思う?」
彼女の口からはそう質問が出て、貴方の理想や思想を知ろうするであろう。難しい回答になるかもしれない。よく考えて、自分の気持ちを言葉に変えるのだ。
小鴨 浅葱 >
「……、そっか、
(貴女の言葉に、彼女は何を思っただろうか。どこか寂しげな色が浮かんだいただろうか。そして貴女から問いかけられたそれに、考え込むように黙り、冷めきった紅茶に手を伸ばした。コクリと、それを口にして──、)
ッゲホッ、!!!?!?
(──じゃり。砂糖の音が鳴る。予想以上の甘さに咳き込んだ。真剣な空気がぶち壊れである。この店のマスターは予想していましたと言わんばかりに小鴨にタオルと新しい紅茶を渡せば、砂糖を2つ入れて、砂糖の入ったポッドを回収していっただろう。ご丁寧に貴女の前にココアを1つ置いていって。マスターが戻る頃には咳き込んでいた小鴨も落ち着き、だがしかし咳き込んだ時に紅茶が変なところに入ったのか若干涙目のまま、問いに答えを出すだろう。)
帝国がどんな国になればいいと思う?っていう問いにはね、ボクは科学で栄えていけばいいと思うよ。遊ぶ場所とか作って欲しい!クルクル回る乗り物とか、急上昇してからひゅーんって落ちる乗り物とか。テーマを決めて、そんな遊び場を作ったらきっと楽しいと思う。侍ちゃんの国は和だよね、侍ちゃんの着てる服…着物?浴衣?甚平?どれだっけな、そういうのを着れる体験とか、鍛冶のちょっとした体験とか出来たらきっと楽しい。そうなるとボクの飛空挺と船長ちゃんの船はきっと、皆を繋ぐ乗り物になるね。
───元帥ちゃん、ボクは今のままでも十分に《平和》な道を作れると思うよ?」
アルテミシア >
「だっ大丈夫!?!?小鴨ちゃん!!?」
山盛りになった紅茶のカップを見かけたときから嫌な予感はしていたが、まさかそのまま君がそれに口付けて飲んでしまうとは思ってもいなかった。そんなことにすら気づけないほどに君が焦ってしまっていることに気がついた彼女は君をとても哀れみ、心の内で申し訳なさに打ちひしがれていただろう。それと同時に大量の砂糖を飲んで噎せてしまった貴方を心配して近寄れば、貴方にコップ一杯の水を渡してゆっくりと飲ませ、こぼれた砂糖まみれの紅茶の後処理をしただろう。
「……ふふ、小鴨ちゃんらしい。楽しそうで、幸せな国だね。」
まるでいつしか読んだことのある絵本にでてきた遊園地のような国だと彼女はそうやって想像を膨らませると、貴方らしい発想であるとほくそ笑むであろう。
「……けどね、小鴨ちゃん、それを叶える為にはそれに『反対』する人たちを倒さなくちゃいけないんだよ。そんな国が生まれれば、自分たちの国に観光客が減って、損をする国もきっとどこかで出てくるだろう。……例えば、華焔とか。」
君の思い描く絵空物語を実現させる為には、それを邪魔する障害をどうにかしなければならないことを彼女は貴方に教えただろう。そして、その例が分かりやすいように、身近な国をひとつあげて貴方に夢の実現の難しさを少しだけ痛感させようか。
「自分たちの国に不利益を齎す国が現れた時は、国同士はいったい何をすると思う??………そう、『戦争』だよ。小鴨ちゃん。」
「戦争は自分たちの『正しさ』を押し付ける為の戦いなんだ。そして、それに負けた国は何もかもを失う。」
戦争をする意味を貴方に教えれば、夢の実現の為には戦いは避けられないということと、世界中の人々が手を繋ぎあって平和に暮らすことの難しさを貴方に伝えただろうか。
「さて、小鴨ちゃん。」
そして彼女はココアをひとくち飲んで、改めて貴方の目を見るだろう。
「君の夢は、帝国を科学によって栄えて遊園地のような楽しい国になればいいということだね。」
そして改めて貴方の実現したい夢を確認する。
「なら、私もその夢に協力しよう。」そしてその夢に自身も加担することを誓うだろう。
「その代わり」
その代わり
「 わ た し の 〝夢〟 に も 協 力 し て 欲 し い 」
小鴨 浅葱 >
「─ねぇ、元帥ちゃん。ボクは、帝国は、こんな国がいいなって語るのと同時に、華焔の魅力も語ったよ。帝国には帝国の、華焔には華焔の、それぞれの魅力があるよ。
(彼女は、帝国が科学の力で遊び場になればいい、と言ったのと同時に華焔は和だと言った。そして、華焔にはこんなのがあるといいね、とも語った。それは、彼女なりの《答え》だったのだが、どうやら貴女には伝わりきらなかったようだ。)
どうして皆、デメリットばっかり見ちゃうんだろうって、いつも思うの。他人を叩くよりも、自分の国の良いところを伸ばしたり、もっと良くするためには?って考えた方がボクはいいと思うんだけど。──平和のために戦って、その戦いで弱くて負けてしまった人たちの憎悪がまた戦いを産んで。戦ってたらずーっと、ずぅっと、戦い続けるしかないんだよ、元帥ちゃん。誰かが辞めないと止まらないんだよ。…元帥ちゃんは、その《誰か》になるのは、嫌だ?
(戦争、の意味がわからないほど幼くもない。皆で手を取り合って仲良くやりましょう、と口に出して言えるほど身分も軽くなくなってしまった。今言っていることだって、難しいことは理解しているけれど、それでも戦って得た平和は、果たして本当に平和だと言えるのだろうか。それが、昔から疑問でならなかった。)
────それとも、そんなことが起こらないように、負けた人たちを全員殺す?そうすれば、戦争に勝てば、平和になるよ。怨嗟なんて起きない。…きっとね。
(─その裏には、きっと平和とは程遠いものが残ってしまうけれど。」
アルテミシア >
『他人を叩くよりも、自分の国の良いところを伸ばしたり、もっと良くするためには?って考えた方がボクはいいと思うんだけど。』
「…………。」
君の言う通り、そうあれば。と、彼女はこの世の無情さと、理由のない悪意を恨んで目を伏しただろう。その顔は貴方から見てとても悲しそうな表情に見えたかもしれない。
「……戦い続けるしか道がないなら、わたしは戦い続ける。」
国を平和にする為、自分の願望を叶える為には他に方法なんてないのだから、アルテミシアは戦い続けるしかないのだと、そう改めて結論づけて告げるだろう。
「わたしは、止まらない。…止められない。誰ひとりとして。もしも戦いを止める《誰か》がいるのだとしたら、その《誰か》はきっとわたしじゃない。」
自分の野望の為に多くの血が流れた。多くの命を奪い続けた。これら全てを無視して、今更立ち止まれるわけがない。動き始めてしまった運命の歯車を止めるためには、それを壊すものが現れるのを待つしかない。即ち、対立の道しか残されていないのだ。
「────誰かがやらなきゃ、この国は滅びゆく運命だろう。」
結末がどうあれ、このままでは帝国は未来永劫近隣諸国と争い続けることだろう。怨嗟の歯車は既に担い手を外れて勝手に回り始めて暴走してしまっている。そうなれば終わることの無い怨嗟の連鎖が永遠に続き、やがてこの帝国は所得格差とスラム街の多発で内乱が起きて滅びるであろう。……ならば、滅びるくらいならば、戦いを続けて、少しでも永く国を繁栄させるしかないのではなかろうか。
小鴨 浅葱 >
「──。(貴女の言葉を聞いて、貴女がもう戻れないところまで来ていることを悟れば、彼女は徐に手を伸ばして、そして。)
そっかぁ…。…それが、元帥ちゃんの《答え》で、《意志》なんだね。
(それならもう、これ以上は何も言わない。貴女は止まれないと言い切った。それなら、貴女にこれ以上助言するのも無粋というものだ。でも。)
元帥ちゃんが戦うなら、ボクは戦わないで頑張ってみるよ。元帥ちゃんの邪魔はしないけど、ボクはボクなり進むから、ぶつかった時はごめんね。─その時は、《喧嘩》しようね、元帥ちゃん。
(彼女は、悲しそうな貴女の頭をぽす、と帽子越しに撫でただろうか。そして、戦争、ではなく、喧嘩、と言えば彼女の意志が伺える。そして、貴女を真っ直ぐと見つめながら言うのだ。)
元帥ちゃん、一つだけ言わせてね。
──あの時、ボクが傷ついたことに対して怒ってくれてありがとう。ボクが怪我をして、そのことで怒ってくれたのは凄く嬉しかった。元帥ちゃんに大切にされてるんだなって分かって、とってもとっても嬉しかった。…それだけ。
(─そう言った彼女の胸元には、キャプテン・キッチュがあのカミカクシから奪った宝がネックレスとなって揺れていただろうか。」
アルテミシア >
「…………ッ……ぅ………ぐ…………!!」
ガンッ!!、という大きな音が聞こえただろうか。アルテミシアが受け入れられない現実に耐えかねて机を強く殴打したのだ。身体を震わせて溢れ出そうになる感情を何とか必死に抑えて堪えようとしている姿が伺える。貴方に帽子越しに撫でられて必死に顔が歪んで零れ落ちそうになる涙も『なぜ?』『どうして?』と激昂して叫びたくなる気持ちも何もかもを堪えて、堪えて、堪え切って彼女は今起きた現実を全て現実なのだと受け止めて、飲み込んだだろう。
「──────いつしか、キミの組織の、傭兵団の宝である《マスターキー》を奪いに行く。…止めたければ、…好きにすればいい。でも、その時は、わたしも容赦はしない。」
きっとこれは彼女なりの温情と最後の警告なのだろう。これ以降は彼女も手段を選ばず、自分の道を進んでいくだろう。貴方に小さな声でそう予告した彼女はふらり、と席をたってそのまま店を出ていったであろうか。
小鴨 浅葱 >
「──。(貴女が店を出ていって、思い出す。研究所で教授ちゃんと二人で食べたショートケーキ。白いクリームとふわふわとしたスポンジが、甘酸っぱいイチゴを引き立てて絶妙なバランスを保っている。それを食べ進めていけば、やがて綺麗な三角形のケーキは崩れて最後にはイチゴが残った。そして、教授の問い。イチゴが皆の欲しがるもので、イチゴを手に入れる手段はフォーク。そしてそれを持っているのはボク。ころん、とイチゴをフォークで転がして、ぷすりと甘い果実にフォークを突き立てた。イチゴは教授にあげた。)
─葵、今度は鬼ごっこだって。
(そう、静かな声で告げて、 ごちそうさま、とマスターに告げてお会計。ココアは小鴨の奢りです。)
さて、と。
……元帥ちゃんっっ!!!!!!!
(貴女がふらりと出ていったのは見た。だからそう遠くは行ってないはず。だから彼女は走って店を出て、貴女を視界に捉えればありったけの声で叫んだ。)
鬼ごっこ!!!元帥ちゃんが鬼だからね!!!!負けないよ!!!!!
(そう言って、彼女は飛空挺の待つ方へと駆け出した。貴女が向かった先とは真逆の方向。生憎と、逃げるのは得意分野だ。負ける気はしないし、負けてもあげない。絶対に逃げ切ってやる。さぁ、《遊ぼう》じゃないか。《喧嘩》しようじゃないか。鬼ごっこは、ボクが貴女に帽子越しに触れた時から始まっていたのだから。さぁ、さぁ!!─鬼さんこちら、手の鳴る方へ!!」〆
司教とキャプテン
科学社が国外追放を命じられてから3日、帝国の権力者の1人であるドロシーは中立を保つ教会をどのように動かすか考えあぐねていた。そこはやってきたキャプテンに勇気を持つこと、自由であることを助言されドロシーは陸軍には協力せず実質的な敵対をすることを選ぶ。
ドロシー・ワイズマン. >
(コクコクと針が時を刻む音、暖炉の炎がぱちぱちと弾け部屋をほんのりと暖める。大量の魔導書が保管された書庫を抜けると、魔術のための研究室がある。古い本のカビ臭さと紅茶の甘い香りがその場所は、子供たちはもちろん大人でさえも許可を得無ければ入ることの出来ない秘密基地のようなものだ。ここは彼女が最も落ち着く場所と言っても過言ではない。いつもの椅子に腰掛けて、机に向かい、紙を用意して、ペンを握る。握っている、だけだった。手は動かない。____。パタリ、握っていたせいで少し暖かくなったそれを机に置いた。深いため息を吐き椅子に深く背を預ける。)
「困りましたね。」
(本当に困った。まさか他国と揉める前に国内で揉めることになると思っていなかった。可能性は十分にあったけれど、教授と元帥は昔馴染みということもあり上手くやっていると思っていた。誰に味方をするのか。誰の敵になるのか。それとも何もしないのか。それは、何を犠牲にするべきなのか考えることと同じ事で。天井をじっと見つめ、結局答えは出せないまま空色の瞳を閉じた。)
キャプテン・キッチュ >
(〖背景、親愛なる世界へ〗
こんな絵本を知ってるか。〝 スカウラー〟と呼ばれる腐敗した魔法族が、世界を壊すお話を。そこで、〝 ダンバリオン・ブルーマウンテン〟と呼ばれる【⠀科学者⠀】が、〝 アンチ・スカウラー〟という料理を作り上げ、世界を救ったお話を。これを食べればもう二度と、スカウラーニ見つかることは無いのだと──────ギシリ。〝 幕が開く〟。それは確かに、今だった。貴方が立てちゃいないであろう他の物音が鼓膜を揺さぶったのだ。可愛い子供たちは貴方の言いつけを守っていればこんなところに近寄りやしないでしょう。しかし現実は変わらない。貴方が振り返ればそこにいるのは、
「────ここからじゃ空は見えやしないが、アンタの目の色はいつだって晴れ模様だったな。Ms・ドロシー。」
【⠀キャプテン・キッチュ】行儀悪く椅子に座り、書庫から適当に取ってきたであろう本を片手にぶら下げながら、帽子の鍔を抑えて口にする。
「…溜息なんてついちゃって、そんなんだから海賊に入られるんだぜ。……帝国の警備は相変わらず〝招待状を頂いて出向くパーティー 〟と変わりなしないんだから。」
暗い図書館に明かりが差し込んでいたから。そこに貴方が居たものだから。奥の部屋には宝があると相場が決まってる。御挨拶ついでに彼は貴方の時間を盗みに来たのでしょう。)
ドロシー・ワイズマン. >
(木が軋む音がする。床が鳴くのなら子供じゃないだろう。重量感のある音だ、男性だろうか。__彼女は閉じていた瞳を開けてはゆるりと立ち上がった。そうして振り返ったそこには、まるでここが自分の居場所ですとでも言うかのように行儀の悪い座り方をした貴方がいる。彼女はパチリと瞬きを1つ。それから無表情に笑顔を添えた。だらりと下げられた両袖を揺らし、あなたの側まで近寄っては口を開く)
「お久しぶりです、キャプテン。その魔導書は魔導教会が管理と保管をしているものです。お返しいただけますか。」
(穏やかな空間に相応しい柔らかな声で挨拶をした。それからそっと左腕を上げては、大きな裾から細い手をのぞかせ魔導書を返すように促す。)
(どうしてあなたがこんな場所に来たのだろうか。幸い、貴方が通ってきた通路に置いてある魔導書はどれも一般的に使用されている"普通のもの"であるから、万が一にそのまま盗まれたとしても問題はない。だからといってそれが目的とも思えない。宝を盗みに来たか、それなら有り得るだろう。国の情勢が揺らぐ今は海賊にとってチャンスであると言える。)
(……彼女はそんなふうに思考を巡らせながらも、そんな素振りは一切見せないだろうか。穏やかで、柔らかく。誰にでも優しい平和主義者。たとえ相手が盗人であろうとも、彼女はドロシー・ワイズマンとして振る舞うのだ。)
キャプテン・キッチュ >
「……今日はさ、アンタに用があってきたんだよ。」
(彼はヒラヒラと本の表紙を見せながら、穏やかな無表情(笑み)を湛える貴方に口にする。そうさ、どうだっていい。鍵のかかっちゃいない部屋からわざわざ3流の宝を盗んだところで貴方は困りやしないから。あくまでもそうやって口にするのは〝 義務 〟であるから。実の所興味がなくったって、この本になんの価値もなくったって貴方は台本を読み上げる女優のように、〝 そう言わなければならない〟。誰かさんの歴史と夢の詰まった書物が無価値なはずは無いけれど、それでも彼は、言葉にした通り今この本に用がある訳じゃあ無かった。
「…………………俺ァさ、今がチャンスだと思ったんだ。…………ほら、アンタら帝国は今〝あまり仲がよろしくない 〟。そうだろ?帝国にゃあ大きな代表格が3人もいるが、それが崩れりゃなんてことは無いと思ってる。」
「だから。」
彼は、椅子から降りる。
そして貴方に歩み寄り、本をわざと遠ざけ、軽く顔を近付けながら口にするのです。
「………─────俺と一緒に少し、散歩に出掛けませんか。……………………今じゃなくちゃ、周りがうるさいったりゃありゃしないだろ。」
「…………この本がアンタにとってそう意味の無いものだとしても、本棚に戻す義務がある。」
「……………………俺ァ大泥棒キャプテン・キッチュ。アンタにとって今最も価値のあるモノ(時間)を少し奪いに来たんだよ。」
「………………………ど?」
時間を盗むなんて常套句、それは何人に言ったのか。他になにか狙いがあるのか貴方の思考はアリスに出てくる〝 堂々巡り 〟によく似ている。 )
ドロシー・ワイズマン. >
(時間泥棒。それは大罪だ、生き物が生きることの出来る時間は大小あれど決まっている。その1部を奪うのだから。それに、今彼女が最も欲しいのは時間と、情報と、それから勇気だった。その1部を奪われちゃたまったものじゃぁない。でも。『魔導書はその人が魂を込めて作ったものだから』『大切にしなくちゃいけない』……なんて、昔聞いた言葉を思い出してしまう。ドロシーは伸ばしていた腕をスルリと降ろし、目を細める。怪訝な顔をするのかと思いきや、首を少し傾けながら花のように笑った。)
「はい、いいですよ。……魔導書は魔導書、どんなものでもその価値は等しく奪われて良いものなど1つもありません。」
「"私の時間"でよいのなら、差し上げます」
(奪われても問題は無い。けれど、"奪われないのならそれがいい"。これは彼女の思考そのものだ、それが本であろうと宝であろうと人であろうと。取捨選択の末に切り捨てることはあっても、そうしなくて良いのならそうしない。さぁ、いきましょう。彼女はそう言って扉の前に立ち貴方が部屋から出るのを待つだろうか。暖炉の火は消えて、部屋に寒さが戻り始める。秘密基地でのお話はおしまい。ここからは、広い外の世界で。)
(彼女は逃げも隠れもすることはなく、あなたの後ろを大人しくついていくだろう。)
「それにしても、さすがキャプテン。耳が早いのですね?」
(元帥が教授に退去命令を出したのはつい先日のこと、話が既に海にまで渡っているのかと思うと恐ろしい。けれどわざわざあくまでも中立を掲げていた教会に顔を出すなんて、よく分からない男だ。それとも、)
「教授や元帥と、なにかお話されたのですか?」
(既にどちらかとやり取りをしていてもおかしくは無い、教授……がわざわざアイオレット・リリーに顔を出すとは思えないが、あの人のことだから手段としては念頭にあるだろう。あなたの言うとおり、彼女の思考は堂々巡りで猫が転がした毛糸みたくなっているだろう。それでも彼女は怒る素振りすら見せず、その糸を丁寧に解いていくのだ。)
キャプテン・キッチュ >
「流石ワイズマン…………………話が早いね。」
(元帥は気まぐれに話に乗った。それはおそらく船の下見のためでもあるけれど、確かにあの時〝 笑っていた〟。教授は〝好きにはなれない 〟と言っていた。銃口を突きつけいつでも殺せていたはずなのに、殺さず自分を船へと返した。では、…──────貴方はどうだろうか。彼は世界を知らなければいけない。それに理由なんてどこにもないのだけれど、強いて言うならば、〝 猫をも殺す、好奇心〟。『それにしても、さすがキャプテン。耳が早いのですね? 』
「むしろそんな大事を、知らない程に俺ァ〝ボウフラ 〟じゃないんでな。」
『教授や元帥と、なにかお話されたのですか? 』
「………………………勘だよ。民が騒がしくない国は、トップが問題を抱えている証拠なんだ。カエンや飛行艇を見てみろ、アイツらの騒がしさったりゃ年中無休のお祭り騒ぎよ。」
飄々と掴みどころない返答だった。何故真意を隠したのか、何故貴方に話さないのか。…一つだけ理由を言うなれば、あくまでも中立を掲げる平和主義に話す内容じゃないということ。外に出た彼は 腰に携えた瓶を手に取り、きゅぽ、と海に向かって蓋を開けるだろう。耳を心地よく揺さぶるは、
「起きろ、〝 ギムレット〟。出航だ。」
──────女性の、失われた言語による鎮魂歌。流れる歴史は酒が零れるように、絵本のようにキラキラと輝き粒子上の夢とともに溢れる波と現れるギムレット。帝国が〝玩具 〟だと鼻で笑う巨大船は、今あなたの目の前に。
「……ところで、アンタのとこの子供達はどう?いい子にやってる?」
今度はこちらから質問をする番。彼は 貴方をゆっくりと船に乗るよう促すかもしれない。)
ドロシー・ワイズマン. >
(しばらく歩いてついたのは港町。賑わう市場に風が潮の香りを運んでくる。ボウフラ、教授かよく海賊団に対してする呼び方だ。彼女はそれを好まないが、自分で言ってくるあたりなんだかんだ教授とも仲良くしていたのかもしれないと安堵を覚える。仲良し…とは言い難いかもしれないが。)
「……ぇ、あ、…はい。元気ですよ。みんないい子で助かっています。」
(キュポン、音を立てて開いた蓋から宝が飛び出る。それは彼らの大切にする宝であり拠点でもある船。魔法では説明のつかないそれを目の当たりにして、彼女はパチリと目を見開いた。驚いていたのか見惚れていたのか、あなたからの問いかけに少しだけ躓いた。)
(船に誘われて、本当に乗るのかと再確認をするようにあなたの顔を不思議そうに見た後、手を借りて船に乗り込むだろうか。もう慣れたものだが、片腕が無いせいでバランスは崩れやすいし、倒れてしまっては支えるものもないから怪我もしてしまう。それが海の上ともなれば尚更だろう。……とにかく、彼女は不慣れながらに船に乗り込んで、そのふわふわとした不思議な感覚に子供みたいに驚いては慣れるまでキョロキョロと辺りを見ているだろうか。)
「ギムレット、……初めて乗りました。」
(話がしたいだけならわざわざこの場所である必要なんてないだろうに。それでも私を外に連れ出してきたのだから何かしら理由があるのだろう。掴みどころのない彼のことだから単純に船に乗せたかっただけ……なんてこともあるかもしれないが。彼女は船に左手を滑らせて、少しだけ嬉しそうにするだろうか。新しい体験というのはいつだって新鮮で心が弾む。しかし彼女は真面目な表情を取り戻せば問いかけるだろう。)
「それで、どうしてこんな場所まで連れてきたのですか……?」
キャプテン・キッチュ >
『それで、どうしてこんな場所まで連れてきたのですか……? 』
「………そうさなァ。」
(それは気まぐれだったのかも知らない。或いはなにか考えが、そんなことを。貴方はこ難しく考えているのかもしれない。〝ギムレットには意思がある 〟。ギムレットは、〝 思考 〟する。彼は貴方が船に乗ったことを確認したのならば 、タン、と足音を鳴らすだろう。すると同時にギムレットは傾くに違いないんだ。大きな音を立てて揺れる船に対し、腕がない貴方はバランスを崩せば転んでしまうに違いない。あの元帥すらよろめいたんだ。陸で育った貴方はどんな魔法を用いてもバランス を崩す可能性が高い。そうだろう?ガッタン、トプン、波の音。鼻腔を擽る潮風と、混じるそれは〝香辛料 〟。恐らく貴方が転ぶ手前、彼は貴方の腰に手を添える。踊りを踊るように、倒れる寸前で支える彼。帽子の下で僅かに見える蜂蜜色の夕焼けは、確かに貴方の青色を捉えて話さなかった。もう片方の手でゆっくり帽子を外し、顔を寄せ、不躾にも薄い唇が触れるギリギリで、
──────ポスリ。
彼はあなたに。〝帽子を被せる 〟かもしれない。深く被せた帽子は彼の素顔が見えない程。
「失礼、……………船が〝 転んだ〟。………………不躾にアンタに触れてしまったことをどうか許して欲しい。怪我をさせるよりはよっぽどいいと思ったんだ。」
「…………お詫びにさ。」
「…………………………今日はアンタが〝 1日船長〟……………なんてどう?」
「………………アンタっていつも〝 無表情 〟だろ。」
「…………………………………崩してやりたかった、………………平和を語るアンタが…〝 なにかに大胆に挑戦してみるとこ 〟がさ。……冒険に必要なのは〝勇気 〟だけ。」
「………………本の読み聞かせよりも魅力的だと思わないか。」)
ドロシー・ワイズマン. >
「っ______、」
(爽やかな香りが近づく。暖かな人の温もりと、柔らかくも心地の良い声。視線を絡ませて捕まってしまった彼女は、その場からピクリとも動けなくなってしまった。近づいてくる顔に彼女はぎゅっと目を瞑る。そうして______。)
(深く被せられた帽子に驚く。顔を上げてあなたの方を見ようとするけれど、帽子のせいで口元しか見えない。"1日船長"と言われても何をすれば良いのやら。彼女は少し戸惑ったように目を泳がせて。やんわりと断りの言葉を口にしようとする)
「お気持ちは嬉しいのですが、わたしは『アンタっていつも"無表情"だろ。』____。」
(何を言われているのか少しわからなかった。貴方と話していると戸惑ってばかりで振り回されてしまう。いつだって笑顔で優しくて平等である彼女を、笑っていないなどという人は今までに1人だっていなかった。)
「……勇気が足りていない、というお話でしょうか。」
(違う。きっと、いつだって理性的で平和ばかりを語る彼女のそうでないという一面がみたいという話だろう。彼女はクイと帽子のつばをあげては、貴方の顔をじっと見据えた。)
「……冗談です。私には大海原を自由に駆け回る権利も、勇気もありません。」
(鋭い眼差しはすぐに緩められて、柔らかく微笑む。それから下を向いて顔を隠した。自由気ままに冒険を。それは、あまりにも彼女とは不釣合いの言葉だった。正しい方を選びとって、なるべく多くの人を幸せにする義務のある彼女にとって。)
「私には、本の読み聞かせで十分なのですよ」
キャプテン・キッチュ >
「…………権利だァ?……ククッ、…そうか。そうだよな。アンタらは〝そういうの 〟……拘るよな。」
(彼は思わず笑ってしまった。愛らしい反応をする貴方も、今だに誰に言われたでもなく〝 民〟の声を優しい笑みを湛えて口にするところも、貴方らしくて…それと同時に。〝司教である ドロシーを無表情と言わせるには十分過ぎた理由〟である。彼の顔は見えなかった。白髪が風に揺れ、その隙間から蜂蜜色の瞳が貴方の青色と交差する。
「…………権利ならもうあげだよ、アンタは帽子を被ってる。籠の中の鳥で居続けるかそうでないかはアンタ次第じゃないか。」
「…………いいかい、読み聞かせぐらい誰だってできるんだ。本ってのは誰かが航海した産物なんだから、その文字を沿って語るなんざァ、…雄武にでもやらしときな。」
本は素晴らしい。その人の人生の集大成だ。万物に限りなく近く、真実を語りながらも夢を見せる術を持つ。本に綴られた冒険に、想像力を働かせ、胸が高鳴る経験は。子供の頃に玩具箱の中身を開けるような、硝子の靴を拾った王子様の心情…そんなものに、もしかしたら似ているのかもしれない。
「権利を持っても、世界に直結する海すら見れねェようじゃあ、……………………誰も国をまとめられやしない。」
「平和ってのは、〝 何もしないこと〟じゃあないことを。アンタだって自覚しているだろう。」
「………………何をやるにも勇気ばかりだ、必須条件と言ってもいい。どれだけあっても足りやしないし、事足りるぐらいに持ち合わせるには大抵〝 イカれてるぐらい〟で丁度いい。」
「………………なァ。その帽子、中々似合っているよ。………ワイズマン………………いいや、『船長 』。」
海賊は、にやりと。〝笑った 〟。)
ドロシー・ワイズマン. >
「……」
(彼女はしばらく目を伏せたままだった。私には冒険する勇気も、力も、何一つ足りていない。あなたに一体何がわかると言うのだろうか。世界が平和になればいいなんて理想論を掲げて、科学者になり、教会に逃げて、実の兄まで殺して。……その日を境に後戻りなんて出来なくなってしまった。"正しいことを選ばなければならない"これが間違いだと言うのだとしたら、私が今までやってきたことは。全部。)
「今日は……まだ、いいです。」
(彼女はあなたから優しく被せられた帽子を、左手でゆっくりと外した。それから少し背伸び気味であなたの頭に帽子を被せようとするだろう。)
「……帝国が、と言うより。今は陸軍と科学社がこうなってしまています。教会はなるべく中立を保っていますが。__故に、私は動けないのです」
(彼女は押し黙る。ギムレットが揺れて、言葉の続きを待っていた。潮の香りが鼻につく。ドロシーさ小さく息を吸って、それからほんの少しのわがままを言っただろうか。)
「司教として動けない以上。……必要な時に、"船長として"その権利を、勇気を、貸してはいただけませんか。」
(それは、横暴故に権利を強奪したいという話ではなかった。ただ単純に、私がしたいことをるための。勇気を出すための言い訳をさせて欲しい、という話だった。彼女は酷く寂しそうに笑うだろう。彼女したいことは誰にだって受け入れられるようなことでは無いことを、よく理解しているから。)
「それから、もし私が悪いことをしてしまったら。私の"宝物"を盗みに来てください、待ってます」
(きっと、あなたなら全部上手く使ってくれる。根拠もなければ関係だって浅いのに、彼女はなぜだかそんなふうに思えてしまっていた。)
キャプテン・キッチュ >
(何もわかるわけがないだろう。だって貴方の口からは聞いたことがない。知ったような口は大衆と変わりやしないかもしれない。無作為に足を踏み入れるというのは〝 そういうこと〟だ。それでも彼は、口にする。
「……………大丈夫さ。きっと上手くいく。」
誰よりも運のいい男は、目に見えぬ確証以上に信じるものは何も無いと言わんばかりに。帽子を被せられれば、そこにいるのはいつもの船長。酷く、ガラス細工が散るように儚く笑う貴方は、今にも消え入りそうだから。だから、彼は──────。
「…………神様が救うのはいつだって〝足元 〟だけだった。」
「俺ァ神様とは程遠過ぎる存在だ。…………でも、それでもアンタの手を離さないことを約束しましょう。……………アンタが待ちきれなくてプレゼントを開けちまうような悪い子だとしても。」
「アンタ〝 も〟必ず盗むから。…………取りこぼしは勿体ないだろう?」
貴方の片手を取り、消えないように留めておくのだ。卑怯な男だから、〝貰える宝は貰っておく 〟。笑う貴方に向ける表情は、年齢の割には大人びていて。そして、そして。
「…………今日はこのまま俺とちょいと息抜きをしよう。子供達にゃあノンフィクションで伝えても夢を抱かせるような、…絵本顔負けのちょっとした散歩をさ。…………大丈夫、今回〝は 〟ちゃんと元いた場所に返すよ。司教さん。」
今日という日を忘れぬために、彼は貴方にも浪漫を知って、貰いたい。)
ドロシー・ワイズマン. >
「はい、そうさせていただきます。」
(束の間の息抜き。今日はこうして貴方と話して、美味しいご飯を食べて、たくさんのお土産話を抱えて子供たちの元に帰ろう。きっと私が悪いことをしても、あなたが叱って奪いに来てくれるのなら。ほんの少しでも"司教"ではなく"ドロシー"として生きていられるのなら。何も不安になることは無い。彼女は胸元のブローチをキュッと握りしめた。海と同じ色をしたそれは、"あの人"からの大切な最後の誕生日プレゼント。あの人はまだ死んではいない、いつだって一緒だ。船長もついている。きっと、なにもかも"大丈夫になる"。……そこに根拠はない。それでもいいのかもしれない。正しくなくても、正しいと思えることを。)
「今日は本当にありがとうございます、船長。」
(おかげで"覚悟が決まった"。彼女はぺこりとお辞儀をすると、あなたに背を向け教会へと帰っていく。教授も、元帥も、こんなふうに励まされたりしたのだろうか。あなたはどの国とも関わってはいないけれど、あなたが最も多くの国や人と関わっているのかもしれない。今日はとても楽しい日でした。明日からも、この胸の高鳴りを忘れぬよう生きていきたいと思います。あなたの勇気と、海と同じだけの広い浪漫を抱えて。)
教授と元帥
元帥が教授に与えた2日の猶予は遠に過ぎていた。
元帥は科学社へ直接乗り込み土地ごと爆破、略奪することで地下に隠されたラプラスの器を回収しようと試みる。
科学社は爆破事件により多大な損害と死者を出したが、最重要人物(プレイヤー等)と全てのデータの避難に成功している。
また、爆破事件は"事故"として処理され、陸軍は科学社跡地に対して念入りに偵察を行った。
アルテミシア>
ケラウス科学研究社の代表取り締まり役であるプロフェッサー・ファルジウムの『退職処分』及び『国外追放』が決定してから数日がたった。アルテミシアが与えた2日の猶予はとうに過ぎており、彼はもう遠い何処かへ行ってしまっただろう、と彼女はとある情報が来るまではそう思い込んでいた。しかし、先程部下から聞かされた話によれば、まだあの教授は研究所に残って実験をしているらしい。その話を聞いた直後のアルテミシアは驚きと困惑のあまり狼狽してしまっていて、すぐに事実確認の為に彼女は研究所へと急いだだろう。
「猶予は2日といった筈だが。……これは、どういうことだ?…プロフェッサー。」
足早に研究所へと向かったアルテミシアは研究所の扉の前で1度深呼吸をして動揺した心を落ち着かせていつもの調子を取り戻そうとしただろう。そして、息が整ったタイミングで扉を開けて、中で作業をしている貴方の姿を探すだろう。そして情報が正しいならそこには貴方の姿があり、彼女は貴方にそう問いかけて説明を求めるだろう。
Prof.ファルフジウム >
「……、お前は私が容易に従うと思っていたのか?仮にそうじゃないなら、私をどうするつもりだった?流石の脳味噌筋肉女でもそこまで考えてなかったわけじゃないだろう?」
(彼は君の声を聞いては車椅子を90度旋回させて、首だけを君の方に向ければそんな言葉を投げかけるだろう。侮蔑と諦観を湛えたその表情で刺す様に向けた視線は他でもない君を目掛けて軌道を描く。退職処分も、そして国外追放も、聞こえて居なかったわけでも、忘れていたわけでもない。聞いていて、知っていて、覚えていて、なお彼はこの場で悠々と研究を続けて居たのだ。)
「少なくとも私の知るお前はもっと利巧だったが頭でも打ったか、それとも________手料理の味見でもしてしまったか?」
(彼はそう呟き、コンピューターに接続された缶ジュース程度の大きさのメモリプラグを抜き取れば自身の首裏のプラグに接続して見せた。これで粗方の準備は完了した。此処まで煽り散らしたのは他でもない、君の血気を高める為だ。彼の計算が正しければ、確実に君を欺く事が出来る。)
アルテミシア >
「……そうか。…そうだったな。お前は、昔からそういう奴だったな。」
侮蔑と諦観を湛えたその視線と目を合わせた彼女の表情は実に悲しそうに見えただろう。そして諦観しているような気配は彼女も変わらず、貴方の言葉を受けて彼女はそう答えただろうか。
「今からこの研究所を爆破する。大事なデータはもうきちんとバックアップは取ったか?もし、まだそれも途中だというのならそれはもう諦めろ。猶予はきちんと与えたのだ。これから先、わたしはお前に容赦しない。」
彼女はポケットから何やら起爆スイッチのようなものを取り出して見せただろう。どうやらこれを押せばこの施設周辺にしかけた爆薬が全て起爆する仕掛けになっているようである。そして、彼女は淡々とこれから起きる事実だけを述べて改めて此処からの立ち退きを貴方に求めたであろう。
Prof.ファルフジウム >
「______容赦しろなんて頼んだ覚えは無いが、……今まで容赦してくれていたのなら感謝しておこう。それと、感謝ついでに教えてやる。この研究所が崩れ去ればラプラスの器は使い物にならなくなるぞ。」
(彼はゆっくりと車椅子から立ち上がる。その際に車椅子の操作盤のスイッチを押して、研究所内に警報が鳴り響く。緊急避難警報の内容は科学者たちやヒューマンコアを逃がす為の物であり、研究者たちの多くが自分にとって必要な情報のつまった携帯端末や資料を抱えて研究所から逃げ出し始める。ヒューマンコアたちは統率の取れた動きで効率的に非難を誘導し、そしてきっと無事に研究所を逃げ出してくれるはずだ。中にはこの研究所で生まれ育った者達も居るだろう。感情なんてものは殆ど排除したはずなのに、思い出の品を大事そうに抱えて出ていく物もきっといるはずだ。)
「………、今それを押せば私もお前も、そしてラプラスの器も瓦礫の下敷きになる…、試してみるか?私は構わんぞ。」
(警報機がけたたましく鳴り響く中、彼は真っ直ぐ君を睨みつけて、両手に黒い皮手袋を、もとい、量子を操るクォンタムスタビライザーを装着する。君が押さなくてもこちらから仕掛けるまでだ。今のその表情も、改竄された歴史によって生まれた表情なのならば、彼は同情や憐憫を感じる事は無い。寧ろ、ぐちゃぐちゃにその顔面を焼き潰したいとすら思うだろう。)
アルテミシア >
「だろうな。…だが、わたしが欲しいのはあくまで〝ラプラスの器〟そのものだ。今、動力源として使っているヒューマンコアは私の方で『別のかたち』で用意する。」
緊急避難を告げる警報音が鳴り響くと同時に彼女は起爆スイッチを作動させるだろう。もうまもなくすればこの施設は跡形もなく消し飛び、地下に秘匿されていたラプラスの器への道が野晒にされてしまうだろう。警報を知らせるサイレン音、それを聞いて慌てふためき立ち退く研究員達はきっとうまくこの爆破からは難を逃れることが出来るだろう。…だが、その大半の人々が待つ末路は彼女が指揮する帝国陸軍たちの強制連行による捕縛であろう。もし、彼らに捕まったなら、研究員たちは軟禁状態を余儀なくされ自由を奪われるだろう。そしてそんな騒動が起こる中、彼女は貴方にそう返答しただろう。どうやらラプラスの器が一時的に使い物にならなくなることは想定の範囲内のようで、そしてそれを動かす『新たなエネルギー』を彼女の方で既に準備しているような様子であっただろうか。
「器は地下にあるんだろう??プロフェッサー。安心しろ、この爆破で器が下敷きになることは無い。なるとしたら今此処でのんびりと語らってる我々ぐらいだろう。……まあ、わたしはこの爆破で下敷きになる気など毛頭ないが、お前がそのまま死にたいというのならば、わたしは止めない。好きにしろ。」
アルテミシアはラプラスの器が既に何処にあるのか把握済みであることを公言しただろう。恐らくこの施設を爆破した後に謎の爆発による『事後調査』という名目で地下の研究施設を調査する腹積もりなのだろう。さて、目的はもう殆ど済ませた彼女はこれでもうあとは此処から出ていくだけなのだが、貴方はどうするだろう。外へ出ればまず間違いなく研究所外で待機している彼女の部下たちに囲まれ貴方もほかの研究員のように連行されてしまうことだろう。
Prof.ファルフジウム >
「……、はあ。____」
(彼はモニターに表示された陸軍の統率の取れた包囲網を目にして、深く溜息を吐く。それから、最後の車内放送を開始するだろう。)
『総員に告ぐ。エンシエル・ワルトース、アルドリック・ホフマン、L-174、ペインター、エピソード・フロム・イエロー、…以上5名を死ぬ気で守り、必ず安全圏へ逃がせ。人足る所以は義務を成せるかだ、どんな犠牲を払っても守り抜け。』
(言い切るのが早いか、それとも放送機能が遮断されるのが先か、崩れ始めた研究所の社長室にて、彼は君の方に腕を伸ばし、小さく呟く。)
「……暫く空の旅を楽しめ、糞袋女が。」
(その瞬間、彼は伸ばした腕の二本指でぱちんと音を鳴らし、同時に互いの間に局所的な核爆発が発生するだろう。爆破され崩れる寸前だった会社の壁は爆風によって吹き飛ばされた君や彼の身体を容易に貫通させるだろう。同時に、彼は【緊急脱出ドローン】を起動する。研究所内に放たれた緊急脱出ドローンは君と彼、そして今まさに彼が放送で呼んだ5名の内、研究所内に残っているものを捉えて、安全にその場から脱出させるだろう。)
【緊急脱出ドローン】行動消費無し、覚悟ゲージを20消費して敵味方関係無く全員に以下の効果を付与する。この手番中のみ逃走判定の出目に-10の補正を追加する。
アルテミシア >
「───────────ッ!!!!?!?」
噂には聞いていたが、あれが指定した場所に局地的な核爆発を引き起こすことが可能である兵器『クォンタムデスタビライザー』…。その威力は想定以上の破壊力で彼が緊急用脱出ドローンを用いなければ自分に命はなかっただろう。幸か不幸か何とか爆発の難を逃れ、生き残ることに成功したが、残念ながら彼をこの場で捕らえることは今回はこれで不可能となっただろう。
「生意気な…。覚えてろ、プロフェッサー……!!!!」
宙に放り出された彼女はすぐにホワイトデーモンを呼び出し、その背に乗るだろう。そして取り逃した彼に向けて忌々しそうにそう吐き捨てれば今回はこれにて彼女は退散するだろうか。しかし、これで事実上ケラスス科学研究所は壊滅に至っただろう。アナウンスであった他5人の捜索も随時これから進めて行かねばならない。それと同時にこれからは『富国強兵』を謀り、装備や陣形を整え、兵士たちを強く育てなければならないだろう。とても今の状態では速やかな蹂躙を行うには至らないだろうからだ。それに想定していたよりも彼の戦力が著しく高い。これを抑え込むためにもより強力な武器や防具、そして魔導具が必要だ。
「……そろそろ彼女に相談するべきか。」
前に話していた武器の製作の話を彼女は思い出し、進めるのは今であると判断しただろう。そう考えた彼女は急ぎ陸軍本部へと戻り『ディア・ウィーケスト』を探しに向かっただろうか。
小鴨と鈴丸
小鴨は華焔の国へと向かい鈴丸と会話を交わす。その際、ラプラス計画に必要な宝の1つ"マスターキー"の偽物を鈴丸に無理やり渡し組織間の争いにを巻き込もうとする。小鴨はそれをきっかけに時間を稼ぎ戦争の火種を消そうと考えていたようだが、うまくは行かなかった。小鴨と鈴丸は戦争を止めるために動く意思を示し、事実上協力関係にある。
小鴨 浅葱 >
「こーんばーんは!
(街は晩御飯も食べ終わってゆっくりしている時間であろうし、貴方もその1人であっただろう。だがしかし、その静かな時間は嵐のように現れた1人の少女によって崩れ去る。コンコンコン!、ときっちり3回ノックの後、ガラッ!と勢いよく開かれた扉の向こうには、その声の主がいた。誰だ、なんて問わなくとも分かるだろう。彼女はいそいそと靴を脱げば、侍ちゃんどこの部屋にいるのー?、とぺたぺたと足音を鳴らして家に入ってくるだろう。」
華焔守鈴丸 >
「…………(彼は縁側に座っておりジッと街を見ていた。その表情はいつもと変わらないものの何かを考えているようで)
…またお主か、本当に自由気ままにウロウロとしておるのだ。
(特に何処にいるとも言わないが君ならすぐに何処にいるか分かるだろう。彼は縁側に座ったままで君の方は見ていないまま話していて」
小鴨 浅葱 >
「侍ちゃんも今度また空飛ぼうね!
(話が微妙に噛み合わないのもいつものこと。また、とはこの前、氷山に行った時に飛空挺に乗ったことを指しているのだろう。にこにこ。彼女は楽しそうに笑って、貴方の隣に座る。身長差もあり、貴方の肩あたりにきっと彼女の頭は来る。
─初めて出会った時よりも成長した彼女の首には空色のネックレスが月に照らされ、揺れいた。その空色のネックレスが何かは、きっと貴方も聞いているだろう。)
あのね、教授ちゃんと元帥ちゃんが喧嘩したんだって。…で、ボクと元帥ちゃんは鬼ごっこ中。司教ちゃんも船長ちゃんも巻き込まれるだろうからー、侍ちゃんも巻き込みに来ました。」
華焔守鈴丸 >
「巻き込まなくて良いそんなものに。そもそも儂はあいつら痴話喧嘩に構ってやるほど暇ではない。
(君の話を聞けば溜息をつくだろう。研究社と陸軍の話は聞いた。正直彼にとってはどうでもいい事だ。何方も嫌いな組織なのでそれが喧嘩したところでということなのだろう。)
関係あるとしたらこのあとだな…儂がずっと前から言っておる和睦の条件。もしあの屑が何もしなければ間接的に叶った訳だからな。一度あやつらの前に行かねばな」
小鴨 浅葱 >
「えぇ、折角のお誘いなのに。
(巻き込まなくていい、と言われれば彼女は唇を尖らせて拗ねたような態度を取って見せた。そして彼女にしては珍しく、静かに黙り込む。冬先の寒い空気が徐々に体温を奪っていく中、彼女は思い立ったように立ち上がれば、貴方の前に立った。)
鬼ごっこがダメなら、そうだなぁ。……内緒話しよっか、─── “ 鈴 丸 ” 。
(言い回しも、言葉選びも、雰囲気も、いつもと一緒。ただ違うのは貴方の呼び方ただひとつ。だけどそれは、彼女が一歩、貴方に踏み込んだ証。貴方はそれに、どう返すだろうか。」
華焔守鈴丸 >
「……なんだ、先に言っておくがあまりふざけたことを言ってみろ。
(彼は君が目の前に立とうが特に変わった様子はなく、名前で呼ばれたも特に反応はしない。が……)
お主が居るのは儂の間合いの中だ。いくらお主が飛ぼうともこの間合いなら儂の刀の方が先にお主の首元に飛ぶと知れ。
(君は何度も探索をして様々な魔物に合っているし傭兵のため様々な強者にも合っている事だろう。鋭利な刃物のような圧は君を見通すようにジッと向けられている。そんな目線を向けられて改めて理解をするだろう。君の前に居るのは華焔守の名を受け継いだ華焔の長、鈴丸であることを。」
小鴨 浅葱 >
「斬られたら斬られたで…まぁ傭兵団の皆は強いしきっと大丈夫でしょ。
(此方をジッと見つめる瞳も、鋭利な刃物のような圧も、彼女は笑って受け入れた。冷たい空気を肺に入れて、息を吐けば、緋色の瞳が貴方を見つめることだろう。)
今ココに、何とマスターキーがあります。
(じゃん!、と軽いノリで胸の中から取り出したのは飛空挺傭兵団の宝であり、そして帝国陸軍が欲しがっているマスターキー、こと、メモリチップがしまわれたペンダント。先代、小鴨 浅斗が未開の地で見つけ出した世界を変えることの出来る鍵。それがどうした、と貴方が見つめるのならば、彼女はいつものように、遊びに誘うのと変わらぬ口調で貴方に言うのだ。)
─もしもこれが、鈴丸の手に渡ったと、そんな“話”が流れたら。あの元帥ちゃんが、ボクに向かって盗みに来ると、わざわざ宣戦布告したものが、鈴丸の手にあった、“としたら”。…面白いと思わない?
(そんな軽い調子で貴方に投げかけられた言葉とペンダント。藍色の宝石の嵌められたそのペンダントは、今、貴方の手にある。」
華焔守鈴丸 >
「さて、それはどうか。実際戦争では、誰も儂を殺せなかったからの。
(彼は戦争時に前線で戦っていた、そしていま現在も生きているということは帝国の兵士も雇われていたであろう傭兵団も彼を殺すことが出来なかったと言うことだ。)
…………お主。(君の話を聞けば彼はジッと君を見るだろう。そして彼の鋭い刃物のような圧は更に強いものになる。それは首元に刀の切っ先が当てられていると錯覚するほどのもので。彼は縁側から立ち上がると)
一度は不問にしてやる。お主の今の発言は聞かなかった事にする。大人しく帰れ小娘。
(君から投げられたペンダントはすぐに投げ返すだろう。そして縁側からそのまま刀を作っている工房の方に向かって歩き出していて」
小鴨 浅葱 >
「え〜、遊んでくれないの?
(ぽん、と軽い調子で投げたロケットペンダントが返ってくれば、ぶーぶー、と不満です、と言わんばかりに声を上げる。でも貴方が1度言ったことを曲げることは滅多にないと知っているから、大人しくまた胸元にしまうのだけれど。貴方がどれだけ強い圧を向けようとも彼女は変わらない。相変わらずの表情を浮かべたまま、まるで親鳥についていくヒヨコのように貴方の後ろについて行こうか。」
華焔守鈴丸 >
「………いいかよく聞け小娘
(君がそんな発言をすれば彼は立ち止まり、君を睨むだろう。)
お主は楽しんでいるのかも知れん。遊びなのかもしれぬ。陸軍の長を騙せて一手上を行ったと思えるのかも知れぬ。
(彼は睨みながらも話し続ける。その目が表す感情は失望と嫌悪そして怒り。いつも無表情で感情が読み取りづらい彼にしては珍しいことだろう。)
儂を巻き込むのは良い。別に陸軍の長くらい儂1人で対応できる。だがな、国の者達はどうだ?今あの陸軍の長はどんな手段もい問わぬ状態だ。その状態で求めるものがこの国にあると知れたらどうする??あやつも馬鹿ではない。それなりの戦力を揃えて来るじゃろう。ならば何が起きるか。お主でも理解出来るじゃろう。
(彼はそのまま君の方へ歩きまた縁側の方に戻りそこから、華焔の街を見る。もう夜中だというのに街は提灯の明かりと人々の笑い声で賑わっているだろう。)
戦争じゃよ。お主が今儂に行ったことは、面白いからという理由で戦争の引き金を儂に渡したと言うことだ。お主が渡したものが例え偽物であったとしても陸軍の長には確認する術はないのだからな。
(街を見つめたまま、彼は話す。街を見つめる目は何かを思い出しているような印象を受ける。)
儂はな、この国の者達が楽しく平和に暮らしてほしい。それが華焔守の名を継いだものとしての意志だ。戦争だって帝国の者達が攻めてこなければ起こす気は毛頭ない。もう関係の無い者達には悲しんでほしくないのだ。
(そして君を見る、一瞬悲しそうな視線を向けるがそれはすぐに無くなり)
お主には失望した。小鴨浅葱。二度とその面、儂に見せるでない。(彼は君を睨みつけ縁側から自宅に入っていくだろう。そのまま奥に行ってしまい。」
小鴨 浅葱 >
「…そっかぁ。
(貴方の言葉を聞けば、彼女はパチリと瞬いて、申し訳なさそうに笑った。そしてしまったはずのロケットペンダントを取り出せばぷらん、と宙に揺らす。コレ、は、元帥ちゃんに渡してもらってよかったのだけれど。彼女はロケットペンダントを開く。そこにはなんにも入っていない、入っているわけが無い。世界を変えるマスターキーが、こんなペンダントに入っているわけがなかろう。藍色の宝石が揺れる。ママの名前と一緒の色の宝石が、ゆらゆらと揺れて此方を見ている気がした。…貴方が元帥ちゃんに会いに行くと言ったから、これをマスターキーが入ってるように思わせて、渡して、それで、時間が稼げると思った。時間を稼いで、教授ちゃんや他の人たちも巻き込んでラプラス計画を壊そうと思ったけれど、あぁ、それでも、だめか。結局ココを巻き込んでしまう。どうして争うの、どうして今のままじゃいけないの。どうして、ねぇ。教えて。
その問いができる人はいない。
だってボクは統治者だから。統治者がそんな質問をしたらダメだから。幼さを理由には出来ないから。だって、船長ちゃんだってきっとそう、年齢は変わらないのに頑張っている。だから、ボクも頑張って、頑張って頑張って。パパとの約束が、パパの遺言が、パパとの、)
…、……ごめんね、“侍ちゃん”。
(一歩、貴方に近づいた彼女は離れる。─呼び方は線引きだった。侍ちゃんと呼ぶのも、教授ちゃんと、司教ちゃんと、元帥ちゃんと、ドラゴンちゃんと、船長ちゃんと。普段名前を呼び捨てで呼ぶはずの彼女が貴方たち統治者をそう呼んでいるのは、“気安く呼んではいけないから”である。つまり、“対等ではないから”、である。─たった2年で、貴方たちと同等など恥ずかしい。教えられたのはたったの1年で、何を覚えたというのだろう、何を学んだというのだろう。そんなこと、ただの言い訳に過ぎないけれど、幼い彼女は、そう思うしかないのだ。 彼女は変わらず、笑っていた。少しだけ眉を下げて、申し訳なさそうに。もう二度と面を見せるなと言われたから追いかけない。もうここには来ない。空にいれば出会うこともないだろう。あぁでも、空は酷く“苦しい”。)
今度は、…んーん、やっぱなんでもないや。ばいばい!
(まるで、何も無かったように。違うのは言葉だけ。またね、ではなく、ばいばい、と告げた彼女は貴方の家から出ていく。…今度はかくれんぼだね、なんて、言えるはずもないだろう。彼から二度と面を見せるな、と告げられたのに。あぁ、どうやら、もう、遊ぶことは出来ないらしい。だったらいい加減覚悟を決めて、空に戻ろう。元帥ちゃんとの鬼ごっこがまだ終わってない。…鬼ごっこ、なんて言えるほど可愛いものでないことは、もう、知っているけれど。)」
「なんで、ボクを統治者にしたの、パパ。」
(答える人なんていない。)
「なんで、ボクも連れて行ってくれなかったの、葵。」
(ぎゅう、と空色のネックレスを握りしめた。)
「────会いたいよ、まま、」
(彼女は、幼すぎた。)
華焔守鈴丸 >
「……っ…(部屋の奥に行ったもののこの家の作りは古民家。壁は薄く君の声も全てしっかりと聞こえていただろう。自室の襖に背中を付ければそのまま座り込んでしまい。)
そうじゃな…そりゃそうだ。あやつは…殆ど年齢が変わらぬのだぞ。
(自室に飾ってある白黒の古い写真を見る。その写真に映る女性は笑顔で映っていて)
儂が……童過ぎたな。また同じ過ちを繰り返すところだ。…………何を笑っておる。本当に性格の悪い刀だな。お主は
(自室から出れば再び縁側に座る。そして刀を抜く。刀は鞘から抜かれれば淡く発光するだろう。)
なるべく目に付かぬ場所にしろよ。心配はかけたくない。………謳え、呪歌。
(そう呟いた途端、彼の着物に隠れた脇腹に大きな斬り傷が生まれるだろう。流石にその痛みは絶大だ。命が半分持っていかれるのだから。少し苦しそうな顔をするがすぐに元の表情に戻す。何故なら眼の前には先程面を見せるなと言ったばかりの相手が立っているのだから。)
その………なんだ。
(力を使ったわいいものの、何を言うべきか全く考えていなかった為少し考えて…)
さっきは言い過ぎた。お主にもお主なりの考えがあるのだろう。しっかりとお主の考えを聞かなかったのは筋違いだな。すまなかった。…それだけだ。もう夜だ早く帰って寝るといい。話はまた明日にでも団子を食いながら聞く。
(そう言うと彼はまた自宅に入るが自室には向かわず居間に居て」
【フレンチ・チェリー】1d6の結果値と同等の手番間この効果は持続する。効果中なら何度でも、手番消費なしで自身の生命を半減させる事で対象のあらゆる行動を無効化できる。により帰る行動を無効化します。
小鴨 浅葱 >
「え、
(ぱち、と瞬いた刹那、目の前の光景はもうすぐ見えるはずだった街ではなく、貴方のいる縁側。なんで、どうして。そんな疑問が渦巻く。道を間違えるはずはない、何度だってここに来て、何度だってまたねと告げて帰っていったから。今更間違えるはずもない。何が起きたか分からなくて、でも貴方の前に現れてしまったことを理解して、そして。)
ッごめん、なさい、なんで、ボク帰ってたはずじゃ、ちが、あ、ごめんなさい…ッ!!
(─戸惑い。焦燥。そして、恐怖。突然起こった出来事に対する理解が追いつかない迷い、二度と面を見せるなと言った貴方の前に現れてしまった焦り、そしてこれ以上貴方に嫌われるかもしれない、という恐れ。まるで親に怒られる子供のよう。そして、それはきっと、貴方に初めて見せる表情だった。いつも笑顔で、魔物に襲われて焦る時も、どんな時だって次の瞬間には笑っていた彼女が、どんな表情をすればいいか分からなくて。だから、貴方に顔を見られないように頭を下げて、それから?)
…、……ボク、は、……うぅん、分かった。明日ね、いつものお団子屋さんでいい?
(貴方の言葉を聞いて、ようやく顔を上げただろう。ぱち、ぱち。緋色が瞬く。笑顔ではなかったけれど、それでも焦燥と恐怖の色は見えなくなっていて、戸惑いながらも貴方の言葉に、了承を返すのだ。そして、ぎゅ、とスカートの裾を握りしめれば、ほんの少しだけ、震える声で貴方に問いかけよう。)
───侍ちゃん、“また明日”、ね?」
華焔守鈴丸 >
「あぁ、また明日な
(一度は居間に行ったものの再度縁側まで来れば頭を軽く撫でてそう言うだろう。)
お主が1度言っていたな。先代、お主の親父から色々教わったそうだが。それはただ守ればいいという事ではない。お主が考え、お主の正しいと思うことをすればよい。先代の意志を継ぐというのは大事なことだが。現在の長はお主だ、小鴨浅葱。自信を持ち、胸を張れ。泣きたいときは泣けばいい。笑いたいときは笑い、怒りたいときは怒り、悲しいときに悲しめばよい。それが人だ、それがお主だ。
(縁側に胡座で座ればそう言うだろう。君はいつも笑っている。もしかしたら先代に何か言われたのかもしれない。が、それが逆に縛りとなっているのだろう。もっと正直になればよいと思っていて」
小鴨 浅葱 >
「…、……──、」
(撫でられることは別に、珍しくはない。でも、ただ。貴方に撫でられることは初めてで、それがほんの少しだけ、パパに似ていたから。)
「うん、」
(未だに、貴方とは対等だとは思えない。他の人たちも、そう。だって、ボクはまだたったの2年しか統治者を務めていなくて、言ってしまえば右も左も分からなくて、でも傭兵団の人たちをまとめなきゃいけなくて、頑張ってみるけど上手くできてるとは思えなくて。それでもパパとの約束があったから、ずっと泣かなかった。怒らなかった。人を許した。周りの人達を大切にした。それは、全部紛れもないボクの意思だと思っていたけれど、)
「……ぼくは、」
(パパの遺言だって、全然守れそうになくて焦ってばっかで今日だって空回りして。貴方に本気で怒られて、漸くダメだと気づけるほどに鈍くて、幼くて、甘い。でも、でも、)
「ッぼく、つかれたよぉ…!なんで、なんでみんなのすること、ぜんぶぼくが責任とらなきゃいけないの?だって、それはみんなが決めたことじゃん、ぼくが決めたことじゃないじゃん!ひとりひとりのめんどうなんて見れないし、統治者の人たちのなまえくらいおぼえててよ!ソラとシンがいなくなって、ぼくのことたよりないって言ってるけどボクより弱いのに、なんで、なんで…ッぼくだってがんばってるに、どうして親のコネだからとか、のぞんでやってるわけじゃないのにがんばってるのに、っ!!」
(堰を切って溢れ出したのはずっとずっと抑えていた不満だった。笑顔の裏に隠した、彼女の感情だった。ぽろぽろと緋色の瞳から雫がこぼれ落ちる。くるしい。喉が痛い。目も痛い。でも止まんない。止め方を知らない。)
「───どうして、みんな戦争するの、」
(彼女は幼い。幼いけれど、喧嘩と戦争の区別がつかないほど幼くはなかった。だから、彼女はずっと元帥との戦争を喧嘩だと言い張った。事実を認めるのが怖かった。だって、認めてしまったら。──元帥ちゃんを、殺さなくてはならないから。)
華焔守鈴丸 >
「人というのは千差万別で恐ろしく欲が深い生き物だ。お主の頑張りに気付けぬ者や批判するものも多いだろう。だが、それが普通なのだ。何も気にすることはない。不死城の様な絶対的な統治や華焔の様な歴史的な統治でもないのだから。傭兵の集まりなのだ、それは組織的に仕方のないことだ。傭兵団の完全的な支配は最早陸軍と変わらない。
(胡座で縁側に座りながら君の話をしっかりと聞くだろう。)
陸軍の長が何を思って今行動をしておるのか、儂はこの国から滅多に出ないから詳しくは知らぬが…。あやつはあやつで国に囚われておる、己の意思を尊重した結果だろう。戦争とは意思と意思のぶつかり合いだ。人間が意思を持ち、感情を持ち、心を持っている以上戦争は無くならん。
(それが現実なのだ、君は君でその現実を知り理解しているのなら彼も口酸っぱくは言わないだろう。)
…だが、まだ大規模な戦争は始まっておらん。今ならまだ間に合うかも知れぬ。それは自由に空を駆けるお主と海を駆ける海賊の長。お主ら二人が鍵だ。この争いを止めると言うのなら儂も力を貸そう。儂の出来ることは鉄を打つ事と斬ることくらいだがな。
(そう言うと彼は立ち上がり、台所からラムネと君が気に入っていたきな粉餅を持ってくるだろう。)
まぁ本音としては敵国の内乱など知ったことではな無かったがな…民に罪はない…
(それに…と呟くがその先は聞き取れなかっただろう。)
そんなに泣きじゃくっては船に戻りにくいだろう。今日は泊まって行け、これを食って風呂は温泉にでも入ってこい。
(着物の袖で涙を拭いてやればそう言うだろう。」
小鴨 浅葱 >
「戦争なんてきらい。…でも感情が無くなればいいとは思わない。
(戦争を無くしたいのならばその大元である感情を消してしまえばいい。そうしたら争いは起こらない。でもそれは、それだけは間違っている気がしたから、それは嫌だ。わがままだ。こぼれ落ちていった涙は地面に吸い込まれて、感情を吐露し終えた彼女は、貴方に涙を拭われて、ようやく落ち着いたようだった。)
…ありがとう、侍ちゃん。やさしいね。
(貴方がそう言うのなら、また今度、船長ちゃんと会った時は葵の話じゃなくて戦争の話をしよう。争うための話じゃなくて、止めるための話を。ラムネの瓶と、きな粉餅を受け取れば縁側に座ってそれをちょこんと膝の上に乗せただろうか。これを食べて、飲んだら温泉に入って、それから侍ちゃんとまたお話をして。それからそれから、船長ちゃんのところに行って、司教ちゃんとドラゴンちゃんにも会いにいかなくちゃいけない。教授ちゃんにだって、話したいこと、聞きたいことがある。元帥ちゃんに会うのはまだ少しだけ先の話。また忙しくなるけど、でも、多分大丈夫。確証はない、戦争が起こらないとも確定したわけではない、だけど、何とかすると決めた以上、最悪のことだけは起こらないように。」
華焔守鈴丸 >
「それがお主の意思ならばそれを貫け。正解、不正解は無いからな。
(君の意見を聞けば縁側から立ち上がるだろう。)
歳を取るとそうなるものよ。今日は休憩だゆっくりしてこい、場所は街の者に聞けば教えてくれるだろう。お主はもう顔が広いからな。布団は敷いておく。
(と言えば彼は布団を出しに向かうだろう。脇腹の傷を自力で抑えるのもそろそろ限界、自室に戻れば包帯をグルグル巻きにして圧迫し止血をするだろう。)
なんだ……お主からすれば少しつまらぬ結果だったか?性格の悪い刀よな。(自分が帯刀する刀、呪歌にそう言えば布団を準備するだろう」〆
キャプテンと王様
不死城に訪れたキャプテンは王様と会話を交わす。穏やかの会話の中でも、王様が不死城から出る"裏切り者"や"国の平和を脅かす存在"には容赦をしない姿勢を示している。
キャプテン・キッチュ >
「…………………──────なあ、なんで怒ってんだよ。」
(事の始まりは、彼が不死城に来たところからだった。数日ぶり、顔を出しちゃいなくて久しく貴方に逢いに来たところ、ずっと背中を向けて反応してはくれないのだ。自由を愛して海をまたに掛け、老若男女を口説き落としてはまた別の方向へふらふらり。故に空いた日にちは元には戻らず、明けぬ夜の月を背景に貴方に話しかける始末。広い広い部屋、いつも通り窓枠のシルエットは初代のままに。名前を呼んでも彼奴は居ない。代わりにいるのは今名を馳せているキャプテン・キッチュ。飄々とした姿はどこかあなたに懐かしさを抱かせる。それ故に貴方が寂しくなること、それ故に貴方が〝あの人はもう居ないのだ 〟とまた叩きつけられるように自覚させられること、彼はもしかしたらしらないのかもしれない。彼だってここ数日色々なことがあったのだ。教授との対峙、世界の情勢、………………あったのにも関わらず昨日賭け事してたのはこの男だけれど。)
スターダスト >
(ぺしりぺしり。高級な絨毯が敷かれているにも関わらず怒りを露わにしている尻尾はひっきりなしに床を叩く。貴方が不死城に来ていたことは昨日の時点で分かっていた。だからいつも通り怒らせにくると思っていたのに、まさかまさかの賭博に夢中で会いに来たのは次の日でした。別に民と仲良くすることを咎める気はない。世界情勢が不安となる中、民が娯楽とは息抜きだ。貴方の関わることで鳥籠の中も忘れ夢に酔いしれるならば王として微笑ましいだろう。だが、だが、それならば次の日を民にして真っ先に自分に会いに行くべきではないだろうか!いくら自由気まま行き先も風任せな海賊とはいえ王に計らいぐらいするのが常識ってものだろう!上の貴方がそんなのだから部下も自分に舐め腐った態度をとってくるのだ。憎たらしいことにトモダチとシルエットがよく似た貴方は嫌なほど時の寂しさを伝えてくる。両手で持つ上着はすでに温もりも匂いすら風と共に立ち去った。"呪いの言葉"を吐いたあの人は未だ約束を果たさない)
「……ふん、科学者の阿呆等に生捕にされればよいものを」
「元より仲間ではなかろう。後継者争いをするならば、蹴落とし合うのが筋というものだ」
「貧弱な人間が我を殺すとほざいていたが、自国のことすら纏められない者は勝手に滅びる」
(以前から後継者争いをしていたのだ。むしろ仲良しの方が気味が悪い。漸く始まったとも言える。三人の存在に出会ったが、狼煙をあげたとするならば陸軍の長が濃厚だろう。あれは暴君の素質を持ち合わせている。武力という純粋な力を持ち合わせていることもあり、不満要素は"潰せる"力はある。狙われるとするならば後ろ盾が少ない研究所か。武力を武器とするならば教会は民、つまり支持率が高いのはあちらなはず。孤児の保護に、食料配布と都市部だけではない慈悲の心に共感を持つものは多いはず。何より帝国は戦争により故郷を奪われた街も少なくはない。原因である陸軍の下につくぐらいならば教会にとなる思考もあり、迂闊に手は出しにくいはず。語る貴方の言葉からここまで推測をしたがあくまで他国のこと。我々の場所まで魔の手が伸びるとしても"許可証"がなければいくら大砲を放っても霧のように消える城に攻め入るほど阿呆ではないだろう。……と、帝国などどうでもいい。一番の問題は)
「貴様等がいると貴族の連中が我に宝を盗まれただの、食糧が足りなくなっただの文句を言いにくる。鼠小僧が見える範囲にいればウダウダ言われない」
(減らず口のお駄賃は先ほどまで床を叩いていた尻尾で脇腹を叩くことで許してあげましょう。自分は象徴であり、絶対的力は持ち合わせていない。義務はあるくせに、権利は与えられていないのと同等だから勝手に住んできただけの存在が偉そうに言ってくる。大体は海賊被害だが、中には"戦争"を語る者もいて大変だというのに。……ただ単に寂しかっただけなのは弱々しく燃える尻尾の炎だけがしる事実)
キャプテン・キッチュ >
「………………………俺ァ女性を敵に回したくはないよ。手に持つのは銃じゃなくて林檎が良い。」
(政治的な権力を持たない研究所はともかく、だ。あくまでも〝 平和主義〟を掲げる教会側は、国内紛争避ける為大きな動きを見せることは叶わないだろう。帝国が一塊になった時、真っ先に火花を散らすのはカエンか、或いは研究所。あの男(教授)も易々と引き下がるたまでもないのは言うまでもない。彼等の宝は知ってる。〝アレ 〟が作動したのなら、恐らく〝命知らずのこの国さえも 〟綺麗さっぱりおさらばさ。
「如何せん、〝 平和〟の種類が多すぎる。あれじゃあ価値観の押し付け合いだ。……一方でアンタらの国は平和で良い、………………俺は好きだよ。」
達観する王様に、彼は軽く口に来る。貴方にとってはそんな世界のことよりも。『 貴様等がいると貴族の連中が我に宝を盗まれただの、食糧が足りなくなっただの文句を言いにくる。鼠小僧が見える範囲にいればウダウダ言われない 』
「……だが俺ら海賊が居なくなった所でデメリットはないはずだ。」
「…………──────わかりやすいなァ、アンタ。」
「………………大丈夫だよ、アンタは独りに絶対ならない。俺が居なくなったって、またギムレットが着てくれる。同じ帽子を被った馬鹿が、必ずアンタに逢いに来る。」
しっぽの炎が縮んでいた。彼からしたら貴族の小言なんてそれこそ〝くそほどにどうでもいい 〟。海賊へのヘイトは次期に今以上に上がることになるでしょう。彼は脇腹をつつかれたのなら 困ったように笑いつつ、次の時代について語った。
「どうする?次の船長が超絶かわい子ちゃんだったら。アンタ思わず番にしたくなっちまうかもよ。」)
スターダスト >
「暴走している奴をどうするかは貴様等"ニンゲン"の役目だろう」
(いつだって人間が火種を撒き散らす。それで被害を被るのは自分(人外)。本当は独りぼっちのお城(世界)だったのに、戦争が起きたからと言って勝手に住まわれたのが始まりの国である不死城はあくまで干渉することを嫌う。ただ"平和"に行きたいだけで、周りが勝手に脅威だと怯えてる。アレが作動した時"生と死を操る"城は漸く眠りにつけるが、それは世界もきえるということ。押すときにはもう世界は煙たく火の海となってることだろう)
「"死"があるからあやつ等は煩いのだろう?無限に湧く水もなければ、食料すらない。だから戦う。死がなければ、満たされていれば、争うことないのに哀れなものだな」
(帝国はスラム街があるように、皆が裕福な暮らしが出来るわけではない。しかも軍人の支給となれば膨大な税を課せられてるに違いない。飼い慣らす為に"パンとサーカス"は大事なのにあちらの国は大きいだけで中身はカスカス。全部有れば奪い合う必要ないのにとかつての帝王が呟いていたことを思い出せば)
「……我は、嫌いだ。船長は皆同じ事を言い早死にする。永遠の生もいらぬという」
「悲しくなるだけなのに何故番を作らねばならぬ」
(あぁ、また嫌なことを思い出させてきた男に嫌だとばかりに箱座りをし直し、尻尾は弱々しく地面に落ちる。何度も船長達を見送った。何度も迎えた。セリフはいつだって似たものばかり。死にたがりの浪漫野郎。番にしたところでその人もまた死ぬ。民も結局死ぬ。番は虚しいだけなのに)
「本当、嫌いだ」
(始まりの船長が唯一残してくれた上着を強く強く握り吐き捨てる。モノだって城から出てしまったら、鮮やかな色も褪せ、解れ、いつか風化する。城だけが唯一ずっそばにいてくれた)
キャプテン・キッチュ >
「巻き込むような言い方だなァ。あくまでも…俺達【アイオレット=リリー】は冒険がしたい、世界がみたい、自由でありたい。…………それだけだ。自由であれればそんなこたァな、知ったこっちゃねェんだよ。」
「………〝平和を実現したい 〟………簡単な事だ。逃げればいい、何もしなきゃいい、………だがそれが出来ないのがアイツらだ。後には引けないんだと聞く耳を持ちやしねェ。」
「……………〝 死 〟は〝終わり 〟を意味する。……死はこの世界の唯一の〝平等 〟だ。………死があるから人間は正気で居られるのさ、可哀想な生き物だろ。」
(それでも、死に抗うのが我々だ。最期の最期まで抗うのだ。この世界には〝 二度と戻らないもの〟が多すぎる。だが、もう一度やり直すことが出来たならば。後悔なんてこの世界に無かったのならば。それは生きていると言えるのか。人間はぬるま湯に使ってちゃいつしか〝指標 〟を見失う生き物だ。食べ物を食べるため、生きるため以外に戦う種族は人間のみ。人間の大半は、魂に〝 争うこと〟が深く深く、刷り込まれてしまっている。そしてこの男もまた、魂に刷り込まれたソレは、自由を求めるばかりだった。
「……………アンタが好きになってくれるのは、冒険をする俺達だ。」
「目を輝かせ、アンタに世界を語ることが出来る俺達だ。」
「……………そんな、俺達が、………………俺が。永遠の命を持っちまえば、きっとそれは。アンタが好いてくれていたアイオレット=リリーじゃあなくなるだろう。」
「……………………ギムレットが浮かばなくなったらさ、一体誰がアンタらに夢を語るんだ。…………閉じ込められたお姫さんは、何を愉しみに毎日窓の外を眺めりゃいい。」
ほらな、変わらない。寂しそうな貴方に対して、呆れるほど言い続けてきた台詞。嫌いだと口にするあなたに、彼は軽く笑いながら答えていた。ここまでは、いつもの流れだった。どの歴代の船長も口にしていたことだった。それでも今日という日は、罪作り。
「…………でも。」
こんなこと言ったら。
「……俺はやっぱり人間だから。」
貴方はきっと。
「………いつだって、アンタとお別れするのは。…………………実は結構〝 寂しいんだ〟。」
「………………だって俺は。〝 キッチュ〟として1度もアンタに、…………………名前を呼ばれたこと、ないだろ。」
………きっと。揺れるカーテン、静かな室内。握り締める初代の上着と、いつも置いてある写真立て。飾ってある歴代の船長の遺品が唯一の存在証明。…彼等だって、彼だって。何も思わず貴方を置いて言ってるわけじゃない。その心中を、今の男が、…きっと、初めて語るでしょう。長い年月を経て、漸く。)
スターダスト >
「貴様等だけが唯一"災害"から逃れられるだろう。研究所が没落すれば自ずと貴様等へと皺寄せが来る。これは必然だ」
(どこまでも自由に、なにものにも縛られない船は何れくるかもしれない災害からも逃れまだ見ぬ土地へと旅立てる。何度も繰り返された世界。スターダストはどこへ行っても不死城から離れなかった。貴方の船に乗るには"思い出"が重すぎる。誰のために作られた世界(宝)か、目の前の男は長年言わなかった。人間は、人間だけがいつも理由を持ちたがる。戦争の理由。生きる理由。死ぬ理由に抗う理由。名前だって動物の間には必要ないのに犬にポチ、猫にタマ。理由がなければ生きることすらままならない人間にとって不死城は地獄と変わらない。静かに貴方がいうセリフを聞いている。耳にタコができるぐらい聞かされた言い訳。姿は違えどみんな同じことをいう。また、独りぼっちになる未来はすぐそこに。変わらないはずの日常から差し出されたのは禁断の果実。甘い香りが鼻を突き刺す)
「……卑怯な」
(解かれた想いは呪縛となり自分を締め付ける。名前を呼んだって留まってくれるわけじゃないだろう。虚しい想いをするのはいつだって自分だ。悲しみの海に溺れたくないから生前は呼ばず、死んで漸く名前を呼べる。呼んだ船長はトモダチだった初代のみ。キュッと唇を噛み、目を伏せて諦めるように一言悪態をつき)
キャプテン・キッチュ >
「…………言っとくけどな、アンタも巻き込まれるぜ。ドラニコフ。…………アイオレット=リリーと知っておきながら開国したのは紛れもなくアンタだった。」
「……………傍観者で居られると思うなよ、帝国は執念深い。ありゃ不死城顔負けの百鬼夜行になるかもな、………元帥ちゃんはアンタの所の〝 民(魔物)〟も従えようとしてる。…………恐ろしいね、神殺しも時間の問題か?」
(彼は口にした。貴方はいつまでも【傍観者】でいられることは無いのだと。確かに不死城には非の打ち所はない。だが海賊を潰したいなら貿易をしているあなたの国にもヘイトは向かうはずだ、オマケにあの元帥は魔物を率いる始末である。では貴方の所はいつまでも平和を掲げていられるのか。〝何らかの方法での干渉 〟を考えていないわきゃあない。『卑怯な 』…そうさ。こうして巻き込むし、こうして貴方に嫌な爪痕を残すんだ。ずるい男。彼は笑みを浮かべたままだった。ゆっくりと帽子を外しまるでキスをする時のように、そう、と寄せて。そして、…そして。
「…………………誕生日なんて分からない。何年生きたかも俺は知らない。」
ぽすり。大事な大事な帽子を外して、貴方に被せるかもしれない。 それからこの若い男は、恐らく貴方を抱き寄せることだろう。身長の高い貴方が箱座りをしていたら、それは容易なこととなる。もしも抱き寄せることが出来たのならば、きっと貴方の背中を優しく撫でるはずだ。
「………海賊はみんなそうだ、老いる前に死んじまう。それでもな、〝 何度だって逢いに行くよ〟。約束だ。」
彼は、貴方の顔が見えない。貴方も彼の顔は見えないだろう。そのために帽子を被せたから。
「………………なあ。……………アンタは俺の、何が欲しい?」
前の船長は地図を。その前は羅針盤を。ある船長は望遠鏡を。その前は、…その前は、その前。…歴代はみんな貴方に贈り物をしていたね。)
スターダスト >
「軍が幾ら束になろうとも"死"は平等だ。奴が本気で殺るならば、それこそスイッチを押さねばならぬだろうからな」
「エイブラハムは裏切りを許さ……」
(傍観者ではいられないのは立場上事実だった。もしも自分の城を攻め落とすとなった場合"ワルプルギス"が許さないだろう。城は意志がある。本来慈悲深く母のように皆に生命を与えているが、敵に対しては有無も言わさず命を刈り取る。民との魂の契約は裏切った場合即座に殺すため。不死城だけが持つ扉技術が盗まれてしまえば、それこそ自国だけではなく侍の国まで迷惑となる。民を宝とし、愛を振りまく故に"裏切りは絶対許さない")
「……逢いに行くか」
(帽子によって遮られた言葉。トモダチが被っていた帽子には貴方の匂いが染み付いたことだろう。けれどもどうせまた変わってしまう。逢いにきたって貴方じゃないと言ったらまた困らせる。なにより自分はそれを言えるほど幼くもなければ馬鹿でもなかった。優しく撫でてくれる手は独りぼっちで産まれたドラゴンにはない母の温もりに似ていて安心する。きゅるるる……二人だけの空間に響く鳴き声)
「歴代の船長は"最も大事なもの"を渡したのだから、貴様がその習わしをするなら大事なものになるだろう。我に欲しいものなどない」
キャプテン・キッチュ >
「…………どこの統治者もおっかねェこと。」
「………人間離れがすぎるんじゃないの。……………俺らにゃあ無縁だな。自由を手放すぐらいなら【生ぬるい平和】なんざクソ喰らえだ。好きに生きて好きな場所で死にたいね、〝贅沢に 〟。」
(侍は刀を。科学は人間兵器を、陸軍は魔物を、教会は不動的に笑みを讃え、貴方は生死を司る。飛行艇はただの人間1人が切り盛りしているんだ。ただの無垢な少女、…そして自分もただの、人間だ。手先を震わすこともなく銃口を人に向けられるだけで快楽は伴わない。覚悟があるだけでそれ以上には何も無い。ただの運のいい男。
「……………最も大事なもンか。」
「…………………………そうだな。………最も大事なもン、………………歴代は意地悪だな。だとしたら〝 誰一人渡しちゃいない〟じゃないの。」
彼は、軽く笑った。歴代は嘘はついちゃいないだろう。肌身離さず持っていた遺品は強い思い入れがあるに違いはないし、それこそ〝1番 〟に最も〝 近しい〟。だが、〝 近しい〟だけだ。 1番大切なものは、
─────嗚呼。違う。意地悪なんかじゃない。…目に見えないから、形になるものを、残したのかもしれない。定かじゃないが、彼はきっとこう口にする。
「分かったよ。」
きゅるる、と小さく鳴く貴方。
「…………泣くなよ、ドラ公。」
「……………………次国に遊びに来た時は、1番に行くよ。…アンタってばすぐ拗ねるんだ。嫉妬か?………ククッ、可愛いねェ、俺ってば各国からも王様からももてちまって大変だ。」
減らず口は相も変わらず。彼は貴方からゆっくりと離れたのならば、帽子を取り、自ら再び被るだろう。蜂蜜色はもうおしまい。
「ンじゃあな、また来るよ王様。………………今度はどんな宝を盗もうかな。 」
白い歯を見せ笑う青年は、いつもの男に戻っていた。)
元帥と司教
司教であるドロシーは元帥を教会に呼び出した。そこで元帥の目的、計画を改めて聞き出す。このままでは帝国以外の国は消滅してしまう、その事をよく思わない司教は元帥を止めるために敵対を宣言。教会は陸軍の協力要請には応えず、ラプラス計画を止めるために行動を起こす姿勢を見せる。
アルテミシア >
ケラスス科学研究社爆破事件から数日がたったある日。アルテミシアはとある人物に呼び出されていた。今回の一件の説明を要求され、今日その人物がいる教会に彼女はやってきていただろう。
「ドロシーちゃん、いるか?私だ、入ってもいいか?」
その人物の名はドロシー・ワイズマン。帝国の三大勢力である『魔導教会』の統治者にして魔導教会修道長である人物だ。アルテミシアは彼女のいる部屋を訪ね、ドアをノックするだろう。そして中にいるはずである貴方にそう告げて部屋の入室許可を求めただろう。
ドロシー・ワイズマン. >
「はい、構いませんよ。」
(彼女はあなたの入室を許可する。中に入れば外の寒さなんて忘れてしまうような暖かな空間がそこにはあった。暖炉がぱちぱちと弾ける音、振込時計が時を刻む音。華やかな紅茶の香りが2人分と、焼きたてのクッキー。彼女は料理が出来ない、形も歪であるからそれらが教会にいる子供たちの手作りであることは容易にうかがえるだろうか。きっとロメリアも手伝ってくれたんだろう。彼女は呼び出しに応じてくれたあなたに柔らかく微笑んだ。)
「よくいらっしゃいました、寒かったでしょう。」
("散らかっていますけれど……"なんて言葉を添えて、椅子に座るよう促すだろうか。ここは子供もほかの大人たちですら入ることを禁止されている彼女の研究室だ。魔術書やペン、紙、魔道素材なんかが辺りに収められている。その端々。科学素材や資料なんかがあることから、彼女の中から科学者としての在り方が消えきって居ないことが分かるかもしれない。)
アルテミシア >
「嗚呼。」
扉の向こうからそう聞こえて来れば、間もなくして扉が開かれるだろう。開かれた扉の前にたっていたアルテミシアの姿は相変わらず凛とした佇まいで冷淡な表情を浮かべていただろう。いつものような〝氷〟を思わせる雰囲気を放ちつつ、今日はそれとは別に内なる野心から出る〝炎〟の感情も少しだけ見えつつあっただろう。
「……。」
部屋に入った彼女は貴方の姿を少し見たあと、貴方の部屋の様子を確認しただろう。
「これは…。教会にいる子どもたちが作ってくれたものかな?──────スゥーー………。…素晴らしい。見事なかおりだ。子どもたちが賑やかに、楽しそうにこのクッキーを作っている光景がまるで目に浮かぶようだよ。」
おそらく、彼女が当たりを確認したのはこの部屋に罠が仕掛けられていないか確認したからだろう。もし、それらの類があれば彼女はその存在に気がつくだろうか。それとは別に机の上に置かれてある華やかな紅茶と形が少し崩れてはいるがどれも子どもたちの頑張りがよく見えるクッキーの姿が見えて、アルテミシアは思わず微笑みを浮かべながらそう口にしただろうか。
「───────さて、何故この場にわたしが呼ばれたのか、それはもうわかってる。研究社の爆破や教授たちの件、だね。」
遠回しな気遣いを抜きにしてさっさと本題に入ろうと思った彼女は貴方にそう告げただろうか。
「わたしも、ドロシーちゃんの考えや思いを知るべきだと考えていた。だから、今日はこうして腹を割って話せる機会を用意してくれて、ありがとうね。」
そこまで告げると彼女は貴方に席に着いても良いかと尋ねて、適当な空いてる席に座ろうとしただろう。
ドロシー・ワイズマン. >
「……そうですね。」
(あなたの言葉を彼女は肯定して、少し目を閉じて考える。彼女が罠などを使ってあなたを捉えるような人物でないこと。きっと貴女もよく知っていることだろう。この部屋には罠もなければ銃やナイフもない。理由は明白だ。彼女には"そんなもの必要ないから"だ。今のあなたが素晴らしいと言ったこと、それにかけて信じることにしよう。)
「器を、盗みましたね。」
(彼女とて何も知らない訳では無い。そもそもとして、ラプラス計画に科学者として携わっていた彼女が"それ"の存在を認知していることは当然といえよう。その在処も、爆破"事故"として処理された事件の際にそれが盗まれてしまったことも。現場を少し見れば分かる事だ。あの事故だって、核爆発の跡がある。それを見れば教授が何かに対抗しようとしたことだって容易に分かってしまう。あの武器は、教授"と"作ったものだから。)
「はい、クッキーは子供たちが作ってくれました。紅茶だって、いれたのは私じゃありません。」
(彼女はサクリ、クッキーのひとつを手に取り口に含んだ。ほんのりとした甘みとバターの香り。教会ではたまにお菓子作りをしている、だからクッキーを焼くことは珍しくない。だからだろう、こんなにも落ち着く味がするのは。あなたが守ろうとしているのは、"こういうもの"では無いのだろうか。)
「何をしようとしているのか、おきかせ願えますか。」
(聞かなくたって分かる。分かっているけれど、あなたが一体どういう考えで動いているのか問いかける。彼女が笑顔を絶やすことはなく、その表情がぶれることはない。いつもならば安心するその表情も、今ではどこか不気味に思えるだろうか。)
アルテミシア >
「嗚呼、〝ラプラスの器〟は我々陸軍が押収させて貰った。」
器を盗んだかと確認を取られれば、彼女は正直そう答えるだろう。しかし言葉はあくまで陸軍に義があるというていを体をなしていて決して『略奪』を行ったわけでは無いという意思を感じただろう。
「…。おいしい。」
アルテミシアもクッキーをひとつ取り、口に運ぶだろう。そして目を閉じてほんのりとしたバターの味とかおりを自分の胸の内に刻むように堪能してゆっくりと味わってから飲み込んだでからひとことそう呟いただろうか。
『「何をしようとしているのか、おきかせ願えますか。」』
ついに来た貴方からの問い。彼女は紅茶をひとくち飲んでから真剣な顔立ちで貴方を見た後に少しだけ後ろめたそうな表情を浮かべて一瞬だけ視線を外し、もう一度覚悟を決めて貴方の目を見ただろう。
「人理漂白術式機構:ハルマゲドンによる世界の〝漂白〟だ。」
アルテミシアはこうして貴方に帝国陸軍の…否、彼女の野望の目的を宣言しただろう。
『人理漂白術式機構:ハルマゲドン』とは聞かずとも貴方はその存在を知っていることだろう。帝国陸軍が所有する『宝』であり、世界そのものを書き換える力を持つ『兵器』である。
「わたしはこの帝国以外の『国』と『歴史』、更には世界に蔓延る『魔物』達を全員世界から消滅させる。そして戦うべき相手がいなくなった新たな世界で、わたしはこの帝国を真に平和な国にしたいと考えている。例えば…」
そして世界が漂白されたあとの世界はどうなるのか、彼女なりにこれまで考えてきた幾つかの『平和な帝国の姿』をあげただろう。その中には以前、喫茶店で会話をし対立関係となってしまった傭兵団の小鴨浅葱の案もあって、世界を1度漂白させたあともすぐに世界を再興させる案を具体的に考えていただろうか。
「……ドロシーちゃんは、帝国はどんな国になればいいと思う?」
前に小鴨浅葱にもこれと同じ質問をした。彼女は科学による発展で栄えた国になれば良いと考えていたようだが、貴方はどうだろう。
ドロシー・ワイズマン. >
(彼女はあなたの話を聞いて、推測は確信へと変わり。そこで初めて彼女は目を伏せた。長いまつ毛を閉じて、静かなこの部屋にとっては長い時間を思考する。"どんな国になればいいか"。彼女はその言葉を聞いて、改めて思うだろう。)
「元帥、あなたは。
___帝国のことしか考えてないのですね。」
(彼女は顔を上げて、あなたの整った顔を、瞳をじっと見つめた。吸い込まれそうな青は、あなたを捉えて離さない。)
「私は、できる限り多くの人々が幸せになる"世界に"なればいいと思います。」
「元帥……いえ、アルテミシア。あなたは初めから他を切り捨てる選択をしているのですよ。」
(彼女は机の引き出しを開けた。それから1つの"手袋"取り出しただろうか。)
「そのクッキーが美味しいといいましたね。スラムの子達が作ったものです。」
(片手しかない彼女は、手袋を口を使いながら左手にはめる。それからゆらりと立ち上がり、あなたの方へと近寄るだろう。)
「この国以外にも多少なりとスラムのようなものはあるでしょう。あなたはそれらを切り捨てると言っているのです。今まで我々が、この世界に生きてきた人々が、積み上げてきた歴史も努力も功績も苦悩も、幸福も、何もかも。」
(近づいて初めて、それがただの手袋では無いことを貴女は知るだろうか。 彼女が身につけたのは"クォンタムデスタビライザー"その原型である。)
「再構築するから大丈夫……笑わせないでください。"死んだ人間も失ったものも二度と戻ることはありません"」
(彼女は左手を上げた。ほんの少し指先を動かせば"音が鳴る")
「器を返しなさい。」
アルテミシア >
「……。」
彼女は目を伏せた。貴方がどう答えるかなんてもう分かりきっていた。誰にでも優しい貴方であれば選択肢はそうであると。だからこそ彼女は最初から自分の野望を貴方にすべて話した。仮に嘘をついたとしても、貴方であればその矛盾にすぐに気づけることだろうし、何より貴方を騙すことは彼女にとって心苦しいことこの上ないものであった。そして、予測していた出来事が現実となり、その現実を受け止めた彼女は悲しくも受け入れたであろう。
「……そうだ。わたしはいつか訪れる帝国の崩壊を防ぐ為に、世界全てを切り捨てようとしている。ドロシーちゃん、君の倫理観からすれば、わたしは『極悪人』だろう。」
アルテミシアはそっとその左腕を掴んでその手を机の上に降ろさせるように動かそうとしただろうか。彼女の表情は彼女の被っている軍帽によって阻害されその表情を読み取ることは難しいだろう。…だが、彼女の声色は若干震えており、いつもより声量も小さく感じただろうか。
「実際、私もこれが『正義』だなんて到底思っていない。……だけど、〝誰か〟がそれを背負って世界を変えなければ、この世界の怨嗟と争いは永遠に断ち切れない。わたしは、その罪と咎を背負ってでもこの怨嗟の続く世界をすべて〝破壊〟する。」
もう〝漂白〟という取り繕った言葉は使わずに世界を破壊すると彼女はそう宣言しただろう。
ドロシー・ワイズマン. >
「生き物は争い続けるものです。争い、弱いものが強いものに淘汰され、そうして進化し進んでいくものです。……1度世界を消して。それで争いが無くなると思っているあなたのその考えが"甘いと言ってるんです。"」
(あなたの表情が見えなくとも。それに伴って彼女の表情が見えなくとも。彼女が怒っていることはよく分かっただろうか。声量は変わらない。ただ、いつもより勢いのあるその声は子供たちを叱る時とは違う声であることはきっと、誰にだってよく分かる。)
「100を消して1を救ったところで、得られるものなんてたかが知れてる。争いは繰り返されます。1度とめたって火種はいつかどこかに落ちて燃えるんです。」
「安楽死か焼け死ぬかの違いです、その死になんの違いがあるのですか、私には到底。……理解できません。」
(心から愛した唯一の1を消して、100を救った彼女は。この理屈を通さなければ自分の今まで生きてきた事もその行いもその全てが過ちであることを認めざるを得無くなる。だからか、それともただ世界を愛しているからか。彼女の考えは曲がらない。あなたの意思が曲がらないことと同じように。)
「戦いたくないのなら……争いで傷つきたくないのなら__」
(彼女は自身の腕に魔力を回した。そうしてあなたの腕を振り払おうとする彼女の力は、貴方と同等かそれ以上に強いものだろうか。軍事に長けたあなたに勝てるわけないと油断していたのならきっと容易に振りほどいてしまうだろう。そうして彼女は"彼と似たようなこと"をあなたに言っただろうか。)
「怖いなら、軍事なんて辞めて家に引きこもっていればいいでしょう。」
アルテミシア >
「……争いはなくなるさ。そうでなければ意味が無い。消滅させる世界と同じ末路を辿るような世界を作ったんじゃ、これから消えていく人々に意味を見いだせないだろう?」
アルテミシアは声を絞り出すようにそう反論しただろう。彼女も生半可な覚悟で世界を作り直そうとしている訳じゃない。だからこそ、消滅させたあとの世界をどのような形で平和を実現させるのか現段階から計画を練っているのだ。ラプラスの器とハルマゲドン、それとマスターキーさえ揃えばこれまで不可能と呼ばれていた概念や理さえも意のままに変えれてしまう。真に争いをなくしたければ、本当に人々から争う心を忘れさせて義務感や人々の感謝のみで経済や技術を発展させていき、憎しみや嫉妬といった感情も消え去るのだろう。しかし、当然の事ながら都合のいいことばかりが起こせるものでは無い。そうなってしまった人類がいったいどれ程可哀想な生き物に成り果ててしまうのか、想像は容易いだろう。だが、元々人類とは悲しい生き物だったのかもしれない。
「やはり、私の考えを理解してくれないか。」
はじめから分かりきっていたことだ。何も悲しむことは無い。彼女はそう告げると席を経つだろう。『話はもうこれで終わりだ』と言わんばかりに。
「この世界の生き物は戦い続ける運命にある。────そう、君も口にしただろう。」
貴方がそう口にした言葉をなぞって彼女は貴方があとに口にした言葉を皮肉交じりに返しただろうか。
「────────。」
彼女はこの部屋を出ていく前に小さな声で『ごめんね。』と呟いてから煙幕を張っただろう。それから何処かで何が割れるような音も聞こえてきただろうか。そして、そのまま貴方が何も行動を起こさないのであれば彼女はその場から消え去っていただろう。
ドロシー・ワイズマン. >
「……」
(あまりにも不確実だ。あなたが世界を壊すようなことをすれば極刑は免れないだろう。そうしたら誰がその世界を実現するというのか。私か教授か、それとも赤の他人か。そんなの、ただの責任転嫁でしかない。世界を壊した責任も、これから世界を作るという馬鹿みたいに責任の重いことも。全てを押し付けて、あなたは世界を消してそれで満足と、そういうことだろう。世界が壊されるくらいないら、帝国を壊してそれ以外も守った方が良いとまで思える。事実。……彼女にはそれを出来るだけの力がある。彼女はアルテミシアの居なくなった煙の舞う部屋でただ立ち尽くしていた。胸元のブローチをぎゅぅと握りしめる。吐きそうだ、泣いて全部叫んで放り出してしまいたいくらいに。胸が締め付けられた。それから小さくため息を吐いていつもの冷静な思考と表情を取り戻す。)
「争いを無くすための争い……こんなにも醜く哀れな行いが、他にあるでしょうか。」
(ポツリとこぼした言葉は誰にも届かないこれじゃあただの、"戦争だ。"部屋を片付けなければ。陸軍とは最悪このまま紛争になるだろうか。国を出ていった教授も探さないといけない、やることは多い。2人分のティーカップをカチャリと重ねる。彼女は、また泣いてしまいそうになった感情をぐっと飲み込んだ。)
鈴丸と教授
国外追放された教授は華焔へと顔を出す。そこで本来敵対関係である鈴丸と交渉を行った。
鈴丸は科学社がヒューマンコアなどを作り出す人道に背いた行いを良しとせず、帝国と和解する条件として科学社の解体を要求していた。しかし、帝国陸軍がラプラス計画を再開したことにより科学社と鈴丸は一時的に協力関係となった。
華焔守鈴丸 >
「……………あぁ、分かった。お主らは街に戻り、街の者に家に入っておくようにと手を出すなと伝えておいてくれ。
(急いで走り、現状を伝える見張りの侍にそう伝えると侍は再び急いで階段を降りていく。まさか、向こうからこっちに顔を出すとは。確かに帝国にバレにくいこの国は彼にとっても都合がいいのだろう。街はバタバタと店を閉める。それはこれから来る来訪者と鈴丸との関係性を知っており何かあったときの自衛と言うものだろう。)
…さて、よくその面を儂に見せに来たなお尋ね者。
(彼は普段は刀を一本しか携えないが今回は違う。今回は大脇差という刀をもう一本携えている。戦争で彼と対峙したことがあるならこれは彼の戦うときの装備だろう。彼は不機嫌そうに君を睨み付ける。普段、自分の知らない相手にはかなりの圧を向けるが。君に対しては明確な殺気とも言える、鋭利な刃物のような圧が君に向けられているだろう。」
Prof.ファルフジウム >
「____ふむ、てっきり言葉より先に刃が飛んでくると思ったがな。その口ぶりは何が遇ったかは知っているのか。」
(君が初めて彼の姿を目にした時よりも、彼は一層痩せ細っていただろう。君が彼に求めているのが何かは呆れる程良く解っている。妹や、それから君の仲間たちの解放…つまり、ヒューマンコアの人権と人格の返還。そして、出来る事ならば君の仲間達の命を弄んだ彼を殺してしまいたいのではないだろうか?だが、想像以上に冷静なのは、君が恐らく自分に脅威を感じて居ないからだろう。そこにあるのは確かな憎悪と殺意だが、小物がこちらを退ける為に行う威嚇なんかとは大きく違う。)
「蛮人、私を殺したいか?」
華焔守鈴丸 >
「…粗方はな。敵国の内乱だ、それなりに探っておる。
(最後に見た姿から大分痩せているように感じる。研究所が爆発したのだ、それなりに体調が悪くなるのは伺えるだろう。)
当たり前であろう。お主の首を取ればあの傀儡達は生まれぬ。作り方があるのかも知れぬが少なくとも数は減る。
(と即答するだろう。そう、全ての始まりは君だ。君が妹や仲間をあの傀儡に改造してどれだけの人が悲しんだか、どれだけの人が怒りを感じたか。命を弄んだ者には誅が必要であろう。)
陸軍にやられ、詰み、最後に儂に首を取られに来たのか?情けない事だな。
(武器の製造を頼むときですら、顔を見せなかったのだ。そんな君がここに訪れわざわざ首を差し出すとは思えない。考えられるとすれば【諦め】今の現状を詰みと感じ、己の命を取ろうとする者への手向けだろうが?なんと、情けないことか。と嫌悪の目線を向けるだろう。」
Prof.ファルフジウム >
「……良い知らせと悪い知らせを教えてやる。」
(彼の表情は”あの時”と変わらず侮蔑と諦観を称えている。一切の武装をしていない様に見えても、彼の双腕の先、その拳には黒い皮手袋を装着している。君が其れを武器として認識できて居るかは分からないが、互いに、いつでも”抜刀”できる状態で在るのは言うまでもない。彼は君の言葉を聞き届けて、ひとつ溜息を吐いてはその言葉の続きを吐き出す。)
「私が死ぬか永い眠りに着けば、部下達がヒューマンコアの人権と人格を返還する。既に2人の部下が任意で解放できる機能を手にしている。」
「…だが、お前の身内を今所持しているのは陸軍だ、私を今殺してもお前の身内は確実に帰って来ないどころか、より多くの民が犠牲になる。____此処までが悪い知らせだ。」
(君が情勢を知っているのならば、その事は知っていて当たり前だが、今この世界は帝国の為に他の島国を消し飛ばすという計画に巻き込まれている。当然、その計画が始動されれば帝国内で奴隷として生きる君の身内は生きながらえるだろう。しかし、君の国に残っている多くの民は消し飛ばされる。当然君もそうだ。彼を殺す事に、感情論を除けば何の利点も無い事は蛮人の君でも理解できるだろう。)
華焔守鈴丸 >
「……そんな根も葉もない話をはい、そうですか。と信じると思うか?儂はお主の事を全く信用しておらん。
(てっきりもう帰ってこないと思っていた妹や仲間達の人格を取り戻すことが分かっただけでも大きいだろう。だが問題は彼の言っていることに対する信憑性だ。こちらは君を全くと言っていいほど信用していない。君が幾ら口で言おうともそれを簡単に鵜呑みするほど、考えていない訳ではない。)
ほう…だから今は自分を殺すなと言いたい訳か。ならばここまでお主は何をしに来た?
(後半の悪い話の部分は残念ながら理解をしている。ここで君を殺せば気は収まるだろう。だがその後帝国との関係はどうなる?結局その後は陸軍を相手取らなければならない。君を殺したことを知れば教会側との仲も良くなくなる可能性が生まれる。もうこれ以上民達を戦果に巻き込みたくはない。 ならばここで眼の前の男の首を刎ね飛ばすにはあまりにもその後が重すぎる。そして君の目的も未だ不明瞭だ。もし全ての内容が真実だとすれば君はわざわざこんなところに出向ことなく何処かに隠れ潜めばいい。そもそもこちらは華焔から出ることは稀だ。この国以外の場所で潜めばこちらに見つかることはないのにわざわざ帝国に見つかるかもしれない危険を犯してまで何故目の前に現れたのか。」
Prof.ファルフジウム >
「焦るな、この国では良い知らせを聞かない習慣でもあるのか?お前が信じようが信じまいがラプラス計画は進む、私を殺そうとも、生かそうとも。
______________そこで、良い知らせだ。」
(彼は君の言葉を途中で遮る様に口をはさむだろう。確かに信用に値する証拠はない、それもそのはずだ。君の様な蛮人に理解できる証拠なんて在る筈が無い。だがそんな事は対して重要ではないのだ。必要なのは君が訊いた通り、自分が此処に来た理由、意図。そしてそれを君に伝えるメリットについてだ。)
「私ならラプラス計画を止められる。だが、この世界を救うにはお前達が必要だ。」
(彼の知る限り、…否、少なくとも自分しか知らないラプラス計画の最終段階、もしもそこまで計画が進んでしまえば並みの兵器では計画の最終段階を止められはしない、もっと、…もっと練度の高い兵器を用いなければ、文字通り刃が立たないだろう。だから、ラプラス計画を止めるには、君の様な優秀な生産職の人間と、君達の様な精錬された武技の達人が必要なのだ。彼は君を真っ直ぐに見つめ、そして言い放つ。)
「___________ 力 を 貸 せ 、 糞 猿 。 」
華焔守鈴丸 >
「…………。
(一々感に触る話し方をする奴だ、と若干イラつきながらも君の話を聞くだろう。しかし君の話は全くを持って正論だ。この国は魔法と科学技術は他国と比べても劣っている。そんな華焔が単独で計画を止める方法は一つだけ。陸軍を壊滅させる事だ。出来ないと言うわけではない、優秀な侍は何人も居る、優れた武具やそれを作る鍛冶師もいる。だが陸軍もそれを補う軍事力と頭の魔物を支配下に置く力がある。あちらは群れの力、こちらは個の力。壊滅まで持って行けても犠牲は多く出るし確実に勝てるという保障はない。そこで君から計画を止める考えがあるという。遺憾な事だがこの男は頭脳に置いてはかなり優れている。そんな男が危険が多く、特攻するような作戦は建てないだろう。彼が考える最善の策が現状計画を止める事に関しての最適解なのは容易に想像がつく。その考えに至ってしまった、自分に腹が立ち舌打ちをするだろう)
………分かった、協力はしてやる屑野郎。だがな、華焔の民に無茶な事や傷つけるような事をしてみろ。お主の首は問答無用で刎ねる。邪魔してくる研究社の輩も刎ねる。それに無駄な犠牲や命を弄ぶような行為も許さぬ。お主の首を刎ねるのは陸軍の娘を止めてからでも遅くはない。
(この男を恨むのは私怨だ。私怨の為に刀を振るうのは昔ならば出来ただろう。だが今は先代達から受け継いだ【華焔守】の名を持っている。この名を背負っているということはこの国を、民を預かるということだ。ならば今、私怨で斬ることよりも民達の今後の生活の為にも不本意だがこの男との協力関係を結ぶことが最善であり、華焔の為であると)
頭を下げても良いぞ、屑野郎。その方が幾分か気分も晴れる。
(と皮肉を込めて言うだろう。」
Prof.ファルフジウム >
「交渉成立だ…お前には決戦の日に大いに働いてもらう、だが、その前にこちらの兵力を高める必要があるだろう。帝国の教会に顔を出せ、協力者を募ってその協力者達に”生き延びる為の力”を授けてやれ。……私はお前ほど公には動けんからな。」
(それはさっそく君に科せられた任務とも云えるだろう。決戦の日に必要なのはあの日線上で見た君の刀捌き、あれなら、少なくとも1度は破滅を防げる。繰り返してきた同じ歴史は彼だけが知っている。それらは非情な運命力によって必ず全滅という終幕を迎えていた。しかし、今回、手元にラプラスの器がない以上、もう二度と繰り返す事は出来ない。何周も何周も繰り返し、時には君と手を取り合って破滅を阻止しようとしたこともあっただろう。それも毎度の如く無情にも破滅には打ち勝てなかったが、それでもまた、彼は君と手を取り合う選択をしたのだ。)
「_______、教授と呼べ。スズマル。」 〆
キャプテンと王様
不死城に対し、帝国陸軍元帥が偵察のための蝙蝠を放ったことがバレてしまう。世界を一掃しようとする元帥を誰も殺せていないことに痺れを切らした王様は、帝国に対し攻撃をすることを考えた。海賊のキャプテンはそれを宥めようとするが意思は曲がらず、帝国民の"避難"に徹した。
スターダスト >
「……改善の余地なしか」
(王座の間にてふかふかとしたクッションを敷かれた椅子。硬めの肘置きにコツンコツンと爪で叩く男の顔は眉間の皺を寄せピリついていた。海賊から指摘され早数週間。"目障りなコウモリ"が飛び回っている夜は優雅な城には不似合い。招いてしまった存在が気づき追い出すか、当の本人が無くすと思っていたがどちらの動きもなし。教会も動く気配が見られない。陸軍の独壇場となっている。別に彼らが天狗になろうとどうでもいい。しかし、自分の"宝"を穢すのは話が違う。今の今まで喧嘩を売られようと手を出してこなかったが、今回ばかりは非常に不愉快。腹の中で煮え繰り返る憤怒のマグマは饒舌に語り世界1の大国を火の海にすることを今か今かと踊っている)
「……"挨拶"しにゆくか」
(ドラゴンの鎖が解き放たれる金属音?自由を謳う海賊に夜風が助けを求めた)
キャプテン・キッチュ >
「はいはいはいはい、ちょォ~~~~~~ッッと待ったァァァ………………………〝 ステイ(待て)〟だよ、〝 ステイ〟。……わかんだろ?」
(その時、彼の声が室内に響いたことだろう。よく通る若者の声だった。たった今、やや急いで来たのでしょう。どこかから飛び写ったような耐性のまま、窓の内側、縁付近にに手を付き、夜風に靡くコートと帽子の鍔、そこにしゃがみこむ彼はゆっくりと立ち上がる。そして、鎮座する貴方を見下ろすように、帽子の下で蜂蜜色を光らせるでしょうか。
「……………………不機嫌狂おしゅう、王様ァ………今日はとことん良い夜だってのにィ、アンタの心は曇り空か?」
否、嵐。その理由は恐らく『察しの通り』と言うやつさ。
「…………………………………情報提供はこの俺がしたんだ。〝 楽しそうなこと〟なら混じえて話すのが常識だろう?若しくは新しい戦いの火蓋が切られるのかな。………………まあなんにせよ。」
「──────〝 待て 〟だ。……………これから何をするつもりかお聞かせ願いたい。俺の勘と。」
「答 え 合 わ せ と 行こ う じゃ な い の 。」
まだその時じゃない、ドラゴンの前に立ちはだかるのは、奇しくも何の変哲もない人間である。)
スターダスト >
「我は十分"待った"と思うが」
(見下ろすように特等席に座っているならず者のトップであり、自分に情報を与えた男。待てと言われたってこちらは十分に猶予を与えていただろう。それまでに改善しなかったのは彼方の落ち度であるはずだ。たかが自国の統一も出来ない奴が世界を基準など出来るはずないだろう。ならば"帝王"になれる種はなかったと判断するのは間違いではないはずだが、貴方は女性に優しい紳士だ)
「"種"を潰すようにいうだけだ。たかだか一つの命と国一つならば国を取るだろう。何より彼方は王権ではない。"民"に決めさせるというならばそれもよし。しかし、こちらとて不快にさせられた身。基地の一つと周囲の建物を壊す程度で一度済ませてやるって話だ。これほど優しいものがどこにいる?」
(ニンゲンは目の前に立ち交渉をしたがっているが、知ったことではないと吐き捨てようとする。一つの命と一つの国どちらを大事にするかなど誰が考えたってわかることだと言われそうだが、暴走を止められないならば動かざる得ない。裏で動いているから待てと言われたとて、ちょっかい出したのは彼方。するということはされる覚悟を持ち合わせているということだろう?万物の願いを叶える宝と世界を消す宝が手にあると言えど全て台無しにすればいいのに)
「何故奴等はあの女を"殺さない"」
キャプテン・キッチュ >
「ハッはァッ、そら言えてらァ……嗚呼、…その通りだとも。………アンタは待った、それも充分過ぎるほどに。アンタの生き様は、〝待ってばかり 〟だ。……………これ以上にないぐらい優しいよ。」
(彼は、うなづいた。充分猶予はあった、それは真実だ。それまでに対処をしないどころか、事態が悪化しかねない。だから貴方が動くんだ。それは知っているとも。そもそも世界が真っ白になるんだ、今の今まで貴方が不敬に対して黙っていた方が、【不自然】である。
「──────だが。」
「………だがな、そりゃあまりにも理不尽だ。
あくまでもフェアに行こう。周囲には住人がいる、そこにゃあガキもいるだろう。…アンタらは死なねえがヤツらは死ぬ、そしてヤツら一般市民はアンタに〝 何もしていない〟。」
「基地が潰れようが国が少しばかり壊れようが俺たちきとってァな、どォォォォだっていいことさ。」
「でもアンタは〝 厄災〟じゃあない。自然災害でもないどころかアンタはまだ、〝生きている 〟。……………いいか、理不尽に命を奪う愚か者は〝 人間 〟だけで十分だ、……………成り下がるのは、…どうだい王様それこそ………………〝王の名も廃れる 〟ってもんじゃないのか。」
彼は、言い切った後に室内に降りた。小さく息をつき、真っ直ぐあなたを見つめた。
『何故奴等はあの女を"殺さない"』
「そりゃ簡単だよ。〝 可愛いから〟。」
若さ故の、冗談を孕んだニヒルな笑みを浮かべて。
「……………俺もあの子、可愛いと思うよ。
……………でも今回はおいたが過ぎたね。
……………アンタが怒るのも無理ないさ、だから俺はアンタを止めない。」
「…………ヘイトを集めるのが、制裁を与えたいのが〝 陸軍 〟だけであるならば、……………俺が俺の為にレディやガキ共優先で助け出したって構いやしないだろ?
野郎とガキと淑女諸君は、俺達海賊の大切な
──────〝 観客〟だからさ。」
浪漫を語るこの男は、酷く目立ちたがり屋なものだから。 …一般市民という名の観客が減るのは、嫌なんだと。貴方が人殺しという選択肢を選んでしまうのが嫌なんだと。強欲だから、貴方のやりたいことも〝自分のやりたい事も 〟押し通す。)
スターダスト >
(ゆらりゆらり動く尻尾。表情は変わることはない。あまりにも理不尽だから民は殺さないでやってくれと"ならず者"が口を出す。フェアで行こうというが)
「……ふむぅ」
(ドラゴンはニンゲンが大嫌い。民(ニンゲン)が死のうとありんこが潰れたのと同じく気に留めはしない。だからいいと言いたかったけれど王の威厳と口に出されたら言い返せないじゃないか。しゅん……としぼんだ尻尾はペタリと床について持ち主の心境を鮮明に映し出せば)
「可愛い?」
「可愛いければ殺さないのか?」
「"理解できん"」
(すかさずピンッ!!と尻尾を立て眉間に皺を寄せて不機嫌さを露骨に出す。可愛いから殺さない。可愛くないから殺す?なんだ下らない基準は。そんなので許されるならば我だって可愛い見た目となり世界を滅ぼしたって"よくなってしまうじゃないか"。ニンゲンというのはつくづく理解ができない)
「元帥を匿うような真似をするようなことしないならば勝手にしろ。……あぁ、でも貴様が目立ったら何かしらで騒ぎになるかもな」
(自分の目的はあくまで自分の逆鱗に触れたモノを消すこと。怒りが鎮まりかえれば再び城にて眠りにつくが、殺した後ですら怒りが収まらなかった場合文字通りこの男は災厄になってしまうのだろう。みんなが仲良く?みんなが幸せに?……本気で思っているならばどうして"ドラゴン(不死城)"が産まれたのだろう)
キャプテン・キッチュ >
『可愛い?』
『可愛いければ殺さないのか?』
「いやうんそれはね、ごめんそれは俺が勝手に言いました。」
「つか分かるだろ見た感じその理由で手を出してないヤツ多分俺しか居ないぜ?信じるなよ可愛い奴だな。」
(いやいやいやいや可笑しいだろ、たしかに軽口を叩いたのは自分だけれどあんな頭良さそうなことしてるのに統治者全員〝可愛いから殺せません! 〟はどう考えたってやばい奴等だろ。それがもし本当なら理解できないのは当然であり通常である。しかしそんなことは確実にない。あるとすれば彼だけど。彼は女性に滅法弱いものだから。…とはいえ、実の所見た目なんて重要視しちゃいないだろうけれど。…しかしだ。
「……………まァ、真面目な話だ。あくまでも憶測だが殺さないのは思い入れがあるからか。或いは、………………仲良かった時代、生い立ち、……そんなのがあるんじゃねェのかな。あの場で元帥を本気で殺そうと目論んでるのは、アンタと鈴丸ちゃんぐらいだ。……………それにほら。俺だってアンタの所に来る〝ならず者 〟だが、アンタは俺を。…………殺さないだろう?」
「………………俺はな。アンタらを殺す理由が何も無いから誰にも手を出さないだけさ。………………だがもしもアンタと同じ立場で尚且つ仲間が殺されたってんなら。」
「…【俺は誰彼構わず銃口を向ける】。」
「有難いね、話がわかる王様で。俺ァ勝手にやらせてもらう。…………だがヒーローじゃないんだ。全員(陸軍)は、無理だろうな。そこらは〝 勝手にしてくれ〟。」
「………なんにせよどうせ世界は〝 消させやしない 〟んだ。…………………………だったら尚更………一般市民にゃ救済を。これからも歴史に名を刻むのに俺ァ忙しい。」
彼は、口にした。目の前の人間はあなたにとって酷く滑稽に映るだろう。 しかしそれが人間だ。…そして統治者の中ではあまりにも〝 軽い〟。そんな立ち振る舞いが、思想を掲げる者たちのヘイトを集めることを、当然理解している。)
スターダスト >
「なんだ違うのか紛らわしい。貴様等ニンゲンは可愛いは正義とかほざくではないか」
(違うとばかりにいう貴方に騙されたとわかれば、尻尾を鞭のように振るい横腹を攻撃しようとし。スターダストは純粋な人外で他は元も含めれば全員ニンゲン。貴方がいうからそうなんだろうと思ったのに、とんだ法螺吹き男だ。不死城に来てもギャンブル、女遊び、盗みと散々たることをしてある。思い出すだけでなんだか腹立ってくるからもう一度叩けるならば叩いてやりたい)
「我とて貴様が"反する者"ならば殺す。船は友が大事にしていたもの。相応しくない者に思い出を穢されたくない。……ワルプルギスもそう思っている」
「殺す理由がないし、ニンゲンは毒壺みたいに不味くて敵わん。理不尽な殺しをしないのが王の嗜みだとほざいたのは貴様だろう」
(民が殺されたかと言われたら殺されてはいないが、エイブラハムの裏切りは絶対に許さない。どれだけ貴方が軽かろうとギムレットと初代が選んだならそれでいい。また短き航海は終えていないのに殺してしまったら、悲しみの海に沈んでしまうじゃないか。ならず者が一般人の救いをするなんてアリババみたいな素敵な盗人よ。そんな男をシッシッと邪魔くさいとばかりに追い払おうとする生物は、どこか"動物(野良)"みたい)
キャプテン・キッチュ >
「…いや言うけどォ……………アンタそれ誰から聞いたんだ?絶対〝ヲタク 〟と呼ばれる種族だぜ、偏見だけど。」
(い゛でっ、…と横腹を叩かれれば軽く擦りながら帽子のズレを直す。一体誰から聞いたんだそれは。軽く肩を竦めたのならば体制を建て直し、あなたに視線を向けるだろう。貴方の思い出、貴方の考え、貴方のスノードームの中に詰め込まれた宝物を穢されたくないと言われた彼は、小さく笑みを浮かべてみせてこういった。
「 馬鹿言え、俺ァ〝ギムレット 〟に選ばれた男だぞ。」
得意げに、彼の宝は貴方のような力はない。船長特権、周りが持てばただの大きな〝おもちゃ 〟。それでもこの男にとっては確かに〝 全て〟であり、まるで冒険に、恋焦がれているかのようだった。
「…………──────ほんじゃあ、アンタが動くのは夜だろうから、…………俺たちゃそれまでに。」
「……………ちょっくららしくもなく〝 ヒーローごっこ〟をしてもいいってことで、話は成立だな。」
「ありがとう、さすがは王様だぜ。」
軽薄な男、クスクス笑う彼は調子がいい。1度貴方に近づいたのならば、鎮座する貴方の顔に顔を近づけ、コツン、と額を宛てがうかもね。そんなことしてまたひとつ、悪い男は直ぐに離れる。帽子を軽く押えたのならば、それじゃあな、と手を振ることでしょう。窓枠に手を掛け、高い高い塔から飛び降りるのは、まるでお姫様をさらいに来た盗賊のようですね。)
キャプテン・キッチュ >
さて海賊総員に次ぐよ!!!!これは船長命令だ!!!!!!そして海賊内にしか共有されないように注意を払って船長は置き手紙をギムレットに残すでしょう!!!【今夜不死城の王様が暴れるってんで、俺たちゃヒーローごっこをする。内容はレディとガキは最優先で、一般市民の避難ができるように〝気を引くこと 〟。こいつは船長命令だ、よろしく♡】だそうだ!!!それはロルに起こしても起こさなくてもいい、ただ頭に入れて置いてね!!!!! 場所帝国だからァ!!!!!
元帥とキャプテン
王様が帝国に攻撃を仕掛ける直前に行われた、元帥とキャプテンの会話である。
元帥は帝国民の避難に尽力し、また海賊もそれに協力をしていた。攻撃は直撃することになるが、彼らの努力の末被害は最小限に抑えられた。
建物に大きな被害はあったものの負傷者は殆どおらず、死者も出ていない。海賊は基本的に国同士のいざこざに興味を示さないが、元帥が目論むのは世界の漂白である。世界を旅する海賊にとってそれは許されないことであり、海賊は帝国陸軍と敵対することを宣言する。
アルテミシア >
「ふむ、不死城の魔竜がこの本部に来るか。…」
数時間前、不死城に潜ませていた蝙蝠からタレコミの情報があった。どうやら間もなく陸軍本部に不死城の統治者であるスターダスト・ドラニコフが乗り込んでくるらしい。目的は未だ分かっていない。だが、帝国に災いをもたらそうとしているのは確かなようだ。アルテミシアは全帝国民に非常事態宣言をし、帝国の軍事区域からの避難、及び戦時被害を最小限にすべく主要地区は全てアンチマジックフィールドの展開や防壁の用意をし、工場などの破壊を未然に防ぎ、万が一乗り込んできた場合の魔竜をそのまま帝国内に留まらせて捕らえるように動いただろうか。戦時中である為、帝国内でも避難訓練は常に実施され、混乱は最小限に抑えられていたであろうか。
「さて、見ての通り我々は不死城の魔竜の相手で忙しいのだが?いったい何の用かな?キャプテン・キッチュ。」
ある程度の対策を出し終えたあとに彼女は貴方に視線を向けただろう。もう間もなくすれば彼の魔竜が攻め込んでくる。今日は貴方が得意としている『時間泥棒』にはあまり付き合える余裕はなさそうだ。
スターダスト >
(星が堕ちて来そうな夜空も科学が発展した街では霞んで見えてしまう。絶えず立ち登るスモッグ。照らされる人工の灯り。虚な目で彷徨う都心のゾンビ達。光が濃ければ闇もまた深し。スラム街で餓死をする痩せこけた赤子の代わりに飽食で嫌いだからと言い食べずに捨てる大人。魔導帝国の変わらない日常に少しばかりお節介焼きの絵本の住民が子供達を夢の国に連れて行くため笛を鳴らしています。空を見上げた子どもが住民に尋ねたことだろう。
『海賊さん、お星様が"堕ちてくるよ"』
『あれは彗星だぜ。ほら、いい子だから船の中に入ってるんだ』
『はーい』
小さな蝙蝠が伝達するまで果たして何時間?それに対してこちらは瞬間移動魔法陣扉を使用して帝国へと訪れた。唯一計画を明かした船長には【実行する数時間前】に行っただけ。王座の間で語られてた話に"蝙蝠"が迷い込むなんて不自然だろう?バサァと上空から星屑の雨が降り注ぎます。神は言いました。
『おぉ、暁の明け星よ。何故お前は近づこうとしたのだ』
風を切る音、隕石のように大きな何かが陸軍基地へと落下する。
ズゴォォォォォォ!!!!!!
不動の土地はひび割れクレーターが生み出されてしまったかもしれない。風圧で周りの建物はドミノの如く薙ぎ倒されているでしょう。被害がなかった民は、教会は、貴方達陸軍は何事だと慌てふためいている?それとも計画通り?砂埃からゆらりとのぞく尻尾は3mはあるだろう。風邪をきるように振りかざされた後に見えたのは10m以上はあるであろう黒きドラゴンの姿。口の間からパチパチ……零れる蒼き焔。鋭い牙を持った口を開けば)
『陸軍元帥、貴様が世界を滅ぼそうと好きにすれば良いが我領土エイブラハムに土足で入り、更には"ゴミ(使役魔物)"をばら撒きおったな。動かずに放っておいたら図に乗ったように我の部屋まで近づけおって……。今すぐに撤退させよ。今すぐにだ。そして"対価"を支払え。でなければ帝国を滅ぼしに掛かる。我は本気だ』
(グルルルッと響き渡る声はかつて存在した帝王を思わせる遊星のよう。エイブラハムは幾度となく帝国に攻められてはいたものの、華焔のように戦争まで発展したことはないが、彼等は不死の住民。一度死ねば終わりの民とが戦いを始めれば勝とうが負けようが"大損害"をこう見るのは帝国側だと教養のない民でも分かる筈だ。民にも伝わっていないラプラス計画(世界抹消)、教会に知らせていない不死城への手出し。明るみになったことへの説明義務と責任が一気に"元帥"貴方へと降りかかる筈だ。もう一度分かりやすく民へ、帝国へ、問う)
『元帥の命と帝国の存続。どちらを取るか"話し合い我の納得できるよう説明を求む"』
キャプテン・キッチュ >
(これは、不死城の長が厄災の如く事を起こす少し前の話である。彼は依然として、変わらぬ笑みを浮かべていた。飄々と軽い口調で、若さゆえの余裕なのか、それともそういう性分なのか。彼は貴方の言葉に返す。
「……………──────随分とまあ、たくさんの敵をお作りになられたようじゃないの、元帥殿。………あのドラ公も怒らせちまって、ヘイト稼ぎは海賊の専売特許だと思っていたがァァ…………………スポットライトはアンタの独り占めか?目立ちたがり屋さんめ。」
(彼は貴方の元に居た。佇むその瞳を見つめているのかは、帽子に隠れたその顔からじゃあわかりやしないだろう。片手の林檎は投げては受け止め、ニュートンの発見を彷彿とさせる。
「……………今日はさ、アンタと話がしたくて。他愛もない話しさ。」
「………………そろそろあんたが、〝 寂しくなる頃合い〟かと、思ってね。」
「………………〝悪役 〟ってのは気分が良いが、…………アンタはどうだ。…アルテミシアさん。」
アルテミシア >
「……くだらんお喋りに付き合う余裕はないといった筈だが?」
他愛もない話し合いをしに来た、とこの期に及んでまだそんな場違いなことを言う統治者がいるらしい。…貴方だ。貴方は今、帝国と不死城の間でいったい何が起きているのかわかっているのだろうか。いや、わかっているのだろう。そのうえでいつもと変わらぬ調子でこうして話しかけてくるのだから、神経を逆撫でにされているとしか思えない。
「敢えて答えてやる道理もない。
────────失せろ。」
気分はどうかという質問に彼女はそう答えて、急ぎ足でこの場を去ろうとするだろう。
「急げ、もう間もなくすればもしかすれば此処も危ういかもしれん。……対策として水蒸気と光の屈折を利用した幻影魔法でこの帝国全土を投影したが、宛になるかわからん。…まあ、奴が怒り心頭であればこの程度の幻影魔法ももしかすれば見破れんかもしれんが。」
此処を去る際に彼女は貴方にそう告げるだろう。そしてそのあと貴方をほかの安全な場所へと避難させるべく着いてこいと指示を出そうか。
キャプテン・キッチュ >
「……良いんだよ、こんなもんで。世界の最期だって俺は夢を語りたい。」
「こんな奴が1人ぐらい居なくっちゃあ物語は面白くないだろ、みんなが大真面目に世界に向き合う。………それこそ滑稽だ。」
「…統治者全員、最近は戦争と話ばかりだ。最初はワクワクしたさ、だがここまで来ると……………〝 つまらない世界になった〟。……………………俺ァそう思っちまって、仕方がない。」
「ちょっとした喧嘩程度で良かったんだよ。」
くつくつと彼は笑った。貴方が〝 いつも通り〟だったことを。何でもない日を祝いたい気分さと。それでも、それでもだ。彼は忙しいとあしらい、尚且つ避難誘導をする貴方の招きに足を踏み出すことも無く、貴方の背中に語るだろう。
「──────ドラ公を怒らせたのは俺だよ。俺が教えたんだ。……………既にそんなこた分かってんだろ?基地を壊される羽目になるのも〝俺が情報を流したから 〟だ。…………どうせも世界消すつもりなのに、アンタはどうして俺を。〝 生かそうとしている?〟」
「……………まだ時間はある。………船員も協力する。…大丈夫。市民の命はなんとかなるさ。」
こんな時だからこそ話すのだ、こんな時だからこそ、彼は選んだのだ。いつだって彼は、〝厄介 〟でありたいから。…統治者1の、捻くれ者でありたいから。)
アルテミシア >
『「──────ドラ公を怒らせたのは俺だよ。俺が教えたんだ。……………既にそんなこた分かってんだろ?基地を壊される羽目になるのも〝俺が情報を流したから 〟だ。…………どうせも世界消すつもりなのに、アンタはどうして俺を。〝 生かそうとしている?〟」』
「…。」
彼女は赤黒いオーラを漂わせ、貴方を睨むだろう。明らかな苛立ちを貴方に向けて真紅の瞳が貴方の背中に突き刺さろう。
「お前にはまだ必要価値があるからだ。………正確にはお前が持つ『船』だが。…だが、あれはお前にしか扱えない代物だろう?だから仕方なく、私はお前を生かしておいてやっているのだ。」
あなたがもつギムレット陸海空全てを航路として進むことが出来る夢の乗り物だ。その軍用価値は非常に高い。だがこれを扱える人物があなたひとりである、貴方が死んでしまえばこの船はただのボトルシップに成り果ててしまうのだ。それはものすごく勿体ないことだろう。
「それに今回の件はどちらにせよ我々の準備不足が敗因だろう。奴だって一国の王であり、生き物だ。その気になればいつだってこの国を落とせていた。その力と行動力を侮っていた我々の落ち度だ。ましてやお前に責任の所在などないだろう。」
そしてアルテミシアは小さくため息を零して自分たち帝国陸軍の力不足と己の未熟さを嘆いただろう。だが、貴方を責め立てる理由はないと告げて貴方がきっと抱えているだろうその罪悪感をアルテミシアは許しただろうか。
「それより、キャプテン・キッチュ。貴様は今我々に協力すると告げたな?……その言葉に間違いないなら、ひとつ頼みたいことがある。」
「………船には戦えないものから順に運んでいってくれ。出来れば、未来のある子ども、そしてそれを産むことが出来る女性たちだ。今はお前の船が頼りだ。…皆を頼む。」
キャプテン・キッチュ >
「あの船は確かに俺しか使えない。アンタらにとっちゃガラクタ同然だが、………俺にとっては最高の宝だ。」
「………………今回は言われずともそのつもりさ、市民はなるべく助ける。…船は〝 市民の避難シェルター用に置いてきた〟。誘導はやってくれてんだろ。」
(赤黒く血なまぐさい確かな殺意に彼は、静かに口にした。帝国でもない人間がそれを阻止するために動くのは言わずもがな。彼だって世界が消えたら〝 困る 〟のだ。ギムレットに乗ってりゃ自分と乗組員、ある程度の人間は助かるかもしれない。だが、〝彼が愛してやまない世界はどうなる? 〟あなたと見た青い海も、貴方が幼い時に隣の〝 男の子〟と見上げた星空だって、彼の指標だって無くなってしまうんだ。国の揉め事なんてクソほどにどうだっていい。しかしそれに〝 世界〟が絡むと訳が違う。 だから、
「でもな、世界が壊れちゃたまったもんじゃない。だから、今日だけだ。…軍事目的でない今日だけ、アンタに協力する。…………どうか忘れないで欲しい。俺達は、【足掻くよ、自分のためにな】。」
だから、引き金を──────引いたんだ。
これは宣戦布告だ。
「アンタが『時間の無駄』を甘んじて受け入れられる世界が来ることを楽しみにしていてくれよ。」
〝平和な世界に居られる管轄をなるべく増えるため、そのために彼女が必要不可欠 〟。──────どっかの科学者の、廃れた身体で変わらぬ胸の内は。彼が〝 買っている〟内容だから。)
アルテミシア >
「───────好きにしろ。だが、忘れるな。我々、…いや〝私〟も貴様たちと同じように、足掻いて自分の野望をその手に掴もうとしているということをなァッ!!!!」
彼女は言葉を発すると同時に〝赤黒いオーラ〟を纏わせた雷撃を自身の剣撃に乗せて貴方に放っただろうか。命中すれば貴方のその軽装では決して耐えられようもなく命を刈り取られてしまうであろう。だが、この攻撃の狙いが貴方の絶命出ないことは知っている筈だ。ならばこれは、………そう彼女の奥義
【X・Y・Z-ゼノ・イールド・ザップ-】
刈り取った魂を彼女の隷属にしてしまう禁忌術。凡そ至近距離で放たれたそれを貴方はどう凌ぐであろうか。
「────────もし!!あの糞魔竜にまた会う機会があるならこう伝えておけッ!!!!!」技の解放と同時に彼女は叫ぶ。
『 どちらの答えも〝 死 ん で も ご め ん だ 〟ってなァあぁあ!!!!!! 』
キャプテン・キッチュ >
「──────気の強い女性は嫌いじゃない………だが忘れるな、アンタも必ず〝可能性の範疇に収める 〟。」
(バチり、バチり、赤い雷光はかつての世界の誕生を。氷河期襲来の権化を連想させる。彼は、赤い色が好きだった。貴方の瞳もリンゴの色も、いなくなった旧友の髪の色だって。彼は帽子の鍔をつまむ。そして、唯一〝嫌いな赤色 〟に向かって叫ぶだろう。
「嘗 め る な よ 。この【⠀アイオレット=リリー海 賊 団 船 長 】をッッッ……」
「メ ー ソ ン・デ ィ ク ソ ン ッッッ………! ! ! !! ! ! ! ! !! ! 」
タンッッッ…!!!!!と彼はその場で足を鳴らす。鳴らした傍から展開させるような蜂蜜色の光により、きっとその奥義は、〝不発 〟に終わるだろう。そして彼は最後に口にするんだ。
「…──────おいたがすぎるぜガッティーナ。…………だが俺は女性にゃ手を上げない主義なんだ。…だから今はステイだ。…………お利口さんで待ってな。」
「いつか。」
「………俺はアンタをも〝 拐いに行く 〟から。」
彼は顔を上げ、顔を見せて笑みを浮かべそう言い残したのならば、その場から踵を返し立ち去ることだろう。ギムレットはその後、約束通り市民を乗せて一時退却した。最後に帽子を外し、横から口元を隠すように貴方に顔を近づけたのは、〝 ここだけの話〟。)
【メーソン・ディクソン】自身に1度でも攻撃した者は例えそれによって打点が入らなかったとしても対象となる。対象は1d6手番の間、魔法とオーバードライブと装備の追加効果が使用不能となる。